ドレスデン軍事博物館(ドイツ、ドレスデン)
Design : Daniel Libeskind
設計:ダニエル・リベスキンド 民主主義を象徴するシャープなウエッジ |
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ドイツのドレスデンにあるかつてのカイザー・ヴィルヘルム1世の軍隊用兵器庫が、ダニエル・リベスキンドのデザインで斬新な軍事博物館へと変身した。建物は1876年に完成したネオクラシシズムの兵器庫。リベスキンド流の大胆なフォルムは、来館する人々を圧倒するパワーをもっている。
元となった兵器庫は1876年の完成だが、建物は1897年に「ドレスデン軍事歴史博物館」として使用され始めた。それはザクセン兵器庫&博物館となり、ナチ博物館、ソビエト博物館、東ドイツ博物館、ドイツ連邦共和国軍事歴史博物館へと変遷してきた。 その敷地がドレスデンの旧市街の外であったために、第二次世界大戦末期の連合軍による空襲を回避することができた。だが1989年には新生ドイツへの適応性から、政府は閉館を決定。やがて時代のムードが変わり、2001年に増改築の国際コンペが開催された。 リベスキンド案は、オリジナルな建物のシンメトリックなファサードを、大胆に分断する巨大な造形で驚かされる。ガラス、スティール、コンクリートで構成された5階建てのシャープなウエッジ(3角錐)が、ファサードから突出している。ウエッジの先端部は、同市で初めて爆撃が行われた地点を指し示している。シルバーに輝くマッシブなストラクチュアが、先鋭的な表現で見る者を圧倒する。 高さ約30メートルのスティール・ネットで覆われたウエッジの内部は、巨大な吹抜け空間で高さ26mほどのところに5階の展望台があり、モダンなドレスデンの市街を見晴らすことができる。スティール製の構造体が一見ランダム風に飛び交う内部の大空間も迫力に満ちて、静穏な雰囲気の新古典主義建築とは対照的だ。 ウエッジ部分は建物をよぎって中庭方向へ、「V」字形の末広がりプランとなって延びている。中庭中央部にある既存の階段室をV字形の狭間に巧みに取り込み、両翼が後方へと長く延びている。リベスキンド特有の鋭角的な展示スペースが随所に展開されて、旧建築に新鮮な息吹を送り込んでいる。 ドイツ最大といわれるこの博物館の展示は、兵器などをはじめとする軍事品で10,500点にのぼる。14世紀の残酷な兵器から有名なV2号ロケット、タンクのコレクション、ドイツ連邦軍がアフガニスタンで使用している兵器など多数が展示されて目を奪う。 ウエッジ部分の5階展示室には、第二次世界大戦でドイツ軍がはじめて爆撃したポーランドの都市ヴィエルニの壊れた歩道の敷石が展示されている。すぐ近くには、その時の爆撃に使用されたドイツ空軍の有名な急降下爆撃機シュトゥーカが展示されている。 リベスキンドのテーマは、新しいファサード によって開放性と透明性を強調し、旧建築の硬直性と不透明性との対照性を表現している。後者は過去の独裁的は体制を意味し、前者は民主主義社会のオープンさを表現ししている。リベスキンドは現在アメリカ国籍をもちアメリカに住んでいるが、ポーランド生まれのユダヤ人で、ナチによるユダヤ人粛清から逃れた過去をもっている。 |
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