審査委員と受賞者の記念撮影

審査結果発表
審査委員長総評
本コンペは今年で4年目を迎えますが、年を重ねるごとに、応募案は充実し進化しています。その年の景気を反映して、応募数には凹凸が見られますが、当選案のレベルは応募数とはあまり関係がないことも特筆すべき点です。とはいえ、これまでの当選案は、リアリティよりもややコンセプト寄りの傾向が強かったように思われます。しかし、今年ははっきりとその傾向が逆転しました。その理由は、本コンペの趣旨、すなわち主催者であるユニバーサルホームが、これからの新しい商品開発を展開する上でのヒントとなる提案を求めていることが、応募者に理解され浸透してきたためだと思われます。これは応募者の中で、建築学生よりも建築設計を専門とする社会人の占める割合が大きくなっている点にも表れています。今年の当選案は、どれも明確な提案を持っていますが、若干の技術的検討を加えれば、すべて実現可能な案ばかりです。この意味で、本コンペは、近来、数多く実施されているコンペの中でも、特定のポジションを占めていることは間違いないように思われます。

■最優秀賞

「ロッカーハウス」

前嶋 章太郎 (小川晋一都市建築設計事務所)
森田 詠子

審査委員長講評
この案は、9.0m×6.3mの単純な箱を、2層吹き抜けの大きな空間と1層の細長い小さな空間に分け、小さな空間の機能をさまざまに変化させることによって、ライフスタイルや家族構成の変化にフレキシブルに対応させるという提案です。街並みとの連続性や、パブリックな都市空間からプライベートな空間へ段階的に変化する心理的な序列、さらには大きな空間と小さな空間の対比など、空間的なメリハリも十分に考慮されています。構造システム、屋根防水、日射制御など、検討すべき課題は多々残されているとはいえ、多様な展開可能性を孕んだ、コンパクトでのびのびとした住宅になっている点を高く評価したいと思います。

■UH賞

「RINKAKU」

谷山 大介

審査委員長講評
この案は、8.4m角の正方形平面の中央に、2層吹き抜けのリビング+ダイニング+キッチンを置き、1階の四隅に土間と階段を、2階の四隅に寝室と水回りを配列した、コンパクトな住宅の提案です。1階の3隅に置かれた入口前庭(径庭)と土間は、都市と室内の緩衝空間であると同時に、気候を制御する一種のダブルスキンとなっています。敷地の設定や、方位とは無関係な図式的な平面計画としている点は、プロトタイプ的な一般性をめざしたためだと前向きに解釈します。したがって、具体的な敷地に置かれた時、敷地条件にフレキシブルに適応できる多様な展開可能性を孕んでいる点を高く評価したいと思います。

■クリナップ賞

「TUTU4+FZ」

岩堀 未来 (岩堀未来建築設計事務所)

審査委員長講評
この案は、1.8m×7.8mの水回り+階段のユニット(FZ=Functional Zone)の両側に、3.0m×7.8mの細長い筒状空間(TUTU)を並べ、全体を7.8m角の正方形平面にまとめたコンパクトな住宅の提案です。筒状の空間は南北(もしくは東西)に開放され、自由に間仕切りが可能なフレキシブルな空間で、中央を貫通するFZによって機能的にバックアップされます。住まいだけでなくシェアハウスやホームオフィスなどの展開可能性が検討され、さらに、パネル化された工業化構法や、温熱環境の制御システムも提案されており、極めてリアリティの高い案である点を高く評価したいと思います。

■優秀賞

「ハウスの類」

三代 圭祐

審査委員長講評
この案は、間口2.7mの東西(もしくは南北)に伸びる通路状の空間の両側に、奥行1.8m×幅2.7mのアルコブ状の機能空間を並列させた単純明快な住宅です。中央を貫く通路状の空間には、半屋外的な土間が置かれ、外部との中間的な緩衝空間となっています。図式的な平面に徹底した魅力的な提案ですが、立面図と断面図がない上に、かなり広い敷地を前提にしたおそらく平屋建ての住宅であり、コンペの趣旨とややズレている点が惜しまれます。

「時をつむぐ記憶の家」

寺田 彩瑛子
洲崎 洋輔

審査委員長講評
この案は、2層の「大きな家」と平屋の「小さな家」を組み合わせ、家族構成やライフスタイルの変化に対するフレキシブルな対応を試みた提案です。正方形平面を持つ大小の家を相互貫入させ、そこに和室を置くことによって両者の緩衝帯を作り出しています。日射制御や街並みへのつながりが考慮された魅力的な提案ですが、やや個別解に偏っている点が惜しまれます。

「空創の自在家」

山口 政規 (株式会社長島設計事務所)

審査委員長講評
この案は、平面が1.8m×0.9mで2層分の高さを持つコの字型の立体構造ユニットを組み合わせることによって、平面計画と構造システムを統合しようとする「自在コア構造」の提案です。構造体を最小化して、フレキシブルな平面計画を達成しようとする意図は理解できますが、構造ユニットを機能に結びつけるために、やや過剰な構造配置になっている点が惜しまれます。

「大きなチューブの家」

余語 良祐 (中部大学大学院)

審査委員長講評
この案は、都心の狭小敷地を想定した3階建て住宅の提案です。中央に採光、通風、動線、配線配管を集約した縦のチューブを通し、その周囲に小さな機能空間を配列したコンパクトで変化に富んだ空間を生み出しています。アルミニウム仕上げのチューブに注がれる天空光の効果は魅力的ですが、RC造の地下室と木造チューブとの構造的な関係が解けていない点が惜しまれます。

「民家の形式」

松本 健太郎 (デザインスタジオ スパイス)
新名 博司 (デザインスタジオ スパイス)

審査委員長講評
この案は、2間(3.6m)×2=4間(7.2m)角の田の字プランの外周に半間(90cm)幅の縁側を巡らせた、古来の民家形式を現代化した住宅の提案です。田の字構造は多様な平面計画を許容し、縁側はダブルスキンとして日射と室内環境を制御します。機能的には過不足のない提案ですが、民家形式にやや引きずられて、突出した魅力に欠ける点が惜しまれます。

■特別賞

「流線家屋」

金子 詩菜 (株式会社ユニバーサルホーム)
後藤 五月 (株式会社ユニバーサルホーム)
日原 大悟 (株式会社ユニバーサルホーム)

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