敷地はベッドタウンとして開発された一般的な住宅地である。開発から30年余りが経ち、現在は世代交代の過渡期を迎えている。
まちに分配された多目的空間、人影のない公園。住宅の庭は建蔽率いっぱいに建てられた結果の余白に過ぎない。
身の回りのものがモバイル化され、暮らしの自由度は増す中、住宅及び周辺環境の使われ方は今のままでよいのだろうか。
本題に移る。住宅のベーシックとは何か。
人やモノの関係性が多様化、複雑化する今の時代で住宅のベーシックは、単体の住宅だけでは考えられないのではないか―
ふと、空を見上げる。全ての住宅に屋根がかかっている。屋根に登ると、不思議な高揚感と、外へお出かけしたような感覚がある。
住宅に公共性を取り入れることで、住宅の新しい可能性を見出せないだろうか。屋根を私有の公共空間とするために、人の活動を許容する空間へと変えていく。
空間化された屋根の上では、それぞれ好きな事をする。小さな風景が集まって、大きな風景となる。
屋根で過ごす時間。そこには世界に誇れる絶景はないけれど、私のまちの素敵な風景があった―