優秀賞
繋がる家 繋げる家 余白のある街並み
西野 一義/イッカ建築設計事務所  稲田 菜穂子/イッカ建築設計事務所  伊藤 真一/スタジオOZ

背景
ニュータウン開発では、依然として根強い南向き神話や、隣地境界線一杯に建てられた画一的な配棟計画が繰り返されている。住宅の外部環境は、自己完結的な内部環境の計画により、隣接する住宅との隙間は完全にデッドスペース化し特徴ない外部空間を生み出している。
これまでの核家族化に対応した住環境のハードづくりでは、住まう側のソフト更新が伴わず、人間の高齢化と共にゴーストタウン化することは明白である。
急速なネットワーク環境の発達により個人間のコミュニケーションは活発化し、パーソナルな意識に多大な影響を及ぼしている。それに伴い各々のライフスタイルも多様化しているのが現状である。
これらの社会背景の変化と多様化に提供される住環境のハードは対応できていない。
住まい側に委ねる以上に、住環境からそれらの意識を内包するハードづくりへシフトする必要が迫られている。

地域との垣根を払拭する
これまでの内向きの豊かさから垣根を越え、外に向けた新たな可能性を提案するため、敷地境界線がルーズな風景を考えた。
ブロック塀を解体し樹木を緩衝帯に伸びやかに繋がる余白を再生することで、境界線を曖昧にする。
住民は土地所有意識から共有意識に変わり、地域との共存による連帯感が生まれる。
こうした日常生活を送ることで、お互いに助け合える関係が築ける。この共有性のある外部環境に接続し、コミュニティを誘発させるために、内部の在り方と外部の庭とが互いに呼応し合い、隣家ともちつもたれつの関係が築ける庭の設えを考えた。
余白がもたらす、通風・採光・視線の抜け、といったものは住環境を改善するだけでなく、隣棟間隔を適正に保ち、プライバシーとのバランス調整が図れることで、外部に開かれ、バーチカルなコミュニティの誘発により、豊かな人間関係の育成に繋がっていく。

展望
住まう側のベクトルを外に向かわせる仕掛けとは、家族以外のコミュニティーを内包できる場を創り出すこと。
人を招いたり開放する場を自ら生み出す事は、まち(外)に対して寛容な状態を提供する事となる。相互扶助なネットワークをこの5棟の住宅群から発信し、眼下の広大な街並みに普遍的に汎用され、余白が色付き始めることを期待すると同時に、このニュータウンで新たな生活をスタートさせた若い世代が、30年後、40年後も孤立せずに、地域と密接に繋がり続ける住環境に成熟していることを願う。