審査講評

審査員

東 利恵建築家/東 環境・建築研究所代表取締役

  • 審査員 東 利恵
  • 15、6年前に、エネルギーや環境について、施主、設計者、大学の環境系の先生と勉強会を行ったことがある。その時に木が地球環境的にリサイクルするエネルギーとしていかに優れているかを学んだ。その時は、薪ストーブがエコロジカルなエネルギーの利用方法として意識した程度だったが、今や、時代は木造建築に向かっている。中層建築も木造が可能になり、海外では規模の大きな木造建築が実現されている。今回初めての審査だったが、応募作をみると、新しい流れに着目して果敢に取り組もうとしている設計者、施工者がでてきていることを実感した。この中層木造建築のデザインが、鉄骨やRCの構造とは違う木造ならではのデザインに進化していくことを期待したい。

腰原 幹雄東京大学生産技術研究所教授

  • 審査員 腰原 幹雄
  • 今回は、中層木造建築という条件のみで、工法を限定せずに中層木造建築をテーマとしたアワードということで中層木造建築の可能性を俯瞰することができるようになった。多層、大規模な建築では、さまざまな用途、要求性能を満足する必要があり、魅力的な空間を実現するためには、さまざまな技術を複合した適材適所の思想が重要になる。設計者もこれまで木造建築を中心に活動してきた人だけでなく、大規模な建築に携わってきた人たちによる木造建築提案も増えてきた。こうした広がりが、中層木造建築をハードルの高い特別な建築としてではなく、普通の建築としてとらえられるようになり、魅力ある都市木造が増えるとともに街の風景が変わっていくことを期待したい。

原田 真宏建築家/芝浦工業大学教授

  • 審査員 原田 真宏
  • 今年は木造を主とした建築物で4階建以上という募集条件となり、中層での木造建築物の事例が集まりました。防耐火の法令上の制約から、たしかに木構造はなかなか現しとはなりませんが、建築重量の軽減によって杭基礎を簡易に済ませる等といった木造のエンジニアリング的なメリットに加えて、仕上げの裏に木構造が隠れているとはいえ、京都や浅草などの歴史的に木造の街並みが広がる地域での「構築度のトーンアンドマナー」に適った「その土地らしい建築」となる可能性を見れたことは、地域景観を考える上で収穫となったように思います。木構造が隠れていても、確かにコンクリートや鉄による建築物とは異なる佇まいとして知覚される。この辺りにも都市木造の意味が潜んでいるように思います。