ピエールヴィーヴ(フランス、モンペリエ)
Design : Zaha Hadid
設計:ザハ・ハディド 繊細かつ流動的表現のデザイン・パターン |
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近年富に数を増やしているザハ・ハディドの作品群の中でも、特にデザイン的統一感が強く感じられるのが「ピエールヴィーヴ」だ。一見して分かるように、それは開口部周りの繊細なストライプ状の水平サッシュや、内部天井の照明ラインなどに表現されている。
RC造の比較的低層の建物が水平に延びて、これに呼応したスティール材のフレームなどが流れるような動きを見せて素晴らしい。元々ザハ・デザインの特徴である流動性が如実に表現された外観イメージは、見る者に忘れ難き印象を与えるだろう。 フランスはエロー県の県庁所在地モンペリエにある「ピエールヴィーヴ」は、同県のパブリック・アーカイブ、マルチメディア図書館、スポーツ機能をひとつの建物に集約した施設。離れて見ると、建物外観は特徴ある強いアイデンティティーを感じるが、近づくと3つの機能部分が明快に分節されているのがわかる。 建物は機能性と経済性のロジックからデザインされた。建物は大きな3つの幹のようなエレメントで構成され、それらが水平に長く横臥している。アーカイブは幹のソリッドなベースに位置し、より開口部の多い図書館がそれに続いている。スポーツ部分とそのオフィスは、幹が二股に分かれてより軽い印象となるはるか先のほうの先端部分に位置している。各部分はメインの幹から垂直的に突出し、各部門へのアクセス・ポイントを分節している。 メイン・エントランスにアクセスすると、ビジターはロビーから1階にあるアーカイブ部門の教育スペースへと誘導される。あるいはエレベータかエスカレーターで2階レベルのパブリック動線へと進む。このメイン動線は、ファサードに沿って凹んだガラス開口部によって分節されており、そこからはアーカイブと図書館の読書室へと直ぐアクセスできる。 このメイン動線の中央部、すなわち建物全体の中心には、3部門に共通のパブリック施設であるオーディトリアムや会議室群がある。これらの重要なパブリック・スペース群が、エントランス上部の大きなキャンティレバー・キャノピー の中心的ヴォリュームを形成している。 延床面積26,000㎡の建物は3つの部門にアーティキュレイトされているが、各部門の間には見応えのある巨大なヴォイド・スペースがジグザグ状に上昇している。これらのヴォイド空間は、建物の構造デザインに大きな影響を及ぼし、床構造においては非常に長いビーム配置をとっている。 アーカイブ・ゾーンでは例外的に重い荷重があるため、ペリメーター部分はショート・スパンの壁面構成となっている。ペリメーター壁はサーマル・マスを提供。これはバッファー・ゾーンとなるアーカイブ周囲のペリメーター通路によって、さらに高められる。 常にオーガニックで自在な建築形態を見せるザハ・ハディドの作品では、シンプルな長方形の平面形をもつ「ピエールヴィーヴ」は珍しい。その立面形や断面形の微妙な女性的な繊細さや統一感のある流動性に、ザハがもつワイドで柔軟かつ流麗なデザイン力を再認識させられる。
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