エマーソン・カレッジ・ロサンゼルス(アメリカ、ロサンゼルス)
Design : Thom Mayne (Morphosis)
設計:トム・メイン(モーフォシス) 学生の未来へ夢を与えるアイコニック・ベース |
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モーフォシスを率いるトム・メインがプリツカー賞を手にしたのは、2004年に地元ロサンゼルスにつくった「カルトランス第7地区本社」によってであった。その後2009年にニューヨークに「クーパー・スクエア41」を完成。昨年はダラスに「ペロット自然科学博物館」が竣工。海外も数年前にパリ・デファンスの超高層「ファール・タワー」コンペに勝利するという活躍ぶりだ。(現在ストップ中)
近年のトム・メインは、アカデミック・ビルや行政ビルにおける形態的かつ比喩的な対立を通して、現代社会における緊張や亀裂を暗示してきた。矛盾や対立的なことに興味があると、かつてのロバート・ヴェンチューリと同じようなこと述べているし、その感覚が大胆に表現されたのが「エマーソン・カレッジ・ロサンゼルス(ELA)」だ。 「エマーソン・カレッジ」はボストンに本部を置く134年の歴史を誇る大学で、コミュニケーションとアートのカリキュラムで有名な大学である。ロサンゼルスの映画産業都市に完成したELAは、アメリカ第2の大都市ロスと、ハリウッドというエンターテイメント・シティの中心に位置し、そのアカデミックなアイデンテイティを十分発揮している。 ほぼ正方形プランの建物は、東西側にスレンダーな10階建てのタワーが立ち、217室の学生寮を収容。2棟のドーメトリィ(学生寮)・タワーの間は巨大なヴォイド空間だ。クラスルーム&スタジオ棟と会議室棟が2列となって長く蛇行しながらこの大空間を飛び、南側空中で交差するという難しいデザインを披露。北側にある不整形なふたつのガラス張りファサードはサンセット通りにはみ出し、さらにハリウッドの丘にある有名な看板を遠望する仕組みだ。 正面ファサードは、東西のドーメトリィ・タワーの最上部に水平バーが渡され両棟を連結している。この部分は屋上にヘリパッドを配し、また下部を照らすライティング装置を装備。さらにこの巨大空間をフレーミングし、スクエアなフォルムのファサードを形成している。 建物は1階にカフェがあり、大学へのアクセスは歩道より階段で2階のエントリー・テラスへ上がり、ガラス張りのロビーへと通じる。大学施設はこの2階を基点として上部に展開。3階からは幅広の階段が南側に向けて上昇し、最深部には多くの建築ドラマを秘めた居心地のよいワイドなテラスが広がっている。 パリの「グラン・アルシュ」に想を得たと思われる四角い顔のELAは、モーフォシスの特徴が遺憾なく発揮されている。無数のブリーズ・ソレイユに覆われたドーメトリィ・タワーと、クラスルーム&スタジオ棟と会議室棟を大胆に分断し、合理性と非合理性の対比が生み出す錯綜的デザインに、意表を突かれる楽しさは健在だ。 ハリウッドの映画ビジネス界に多くの卒業生を輩出してきた「エマーソン・カレッジ」は、同窓会やLAコミュニティのためにワークショップをはじめ講演会、その他のイベントを開催。学生宿舎、教育施設、管理オフィスを1箇所にまとめたELAのアイコニック・ベースは、在校生に将来のプロフェッショナル活動への大きな夢を与えている。 |
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