ボルチモア大学ジョン&フランセス・アンジェロス法律センター(アメリカ、ボルチモア)
Design : Stephan Behnisch (Behnisch Architekten)
設計:シュテファン・ベーニッシュ(ベーニッシュ・アルキテクテン) LEEDプラチナム賞を意図した高性能サステイナブル・デザイン |
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アメリカはボルチモアのマウント・ロイヤル・アヴェニューとチャールズ・ストリートが直交する交通量の多い交差点。「ボルチモア大学ジョン&フランセス・アンジェロス法律センター」はこの交差点に立つボルチモア大学の顔である。クラスルーム群、学部オフィス、管理オフィス、法律図書館を内包する建物は、機能的にもシンボル的にもこの法学部を社会的かつアカデミックな連結体として限定しつつ最新の教育施設を提供し、また学生、学部、管理者相互のインタラクティブで意思疎通可能な環境を生み出している。
ボルチモアのランドマークとなった建物は、3つの空間がL字形のヴォリュームを構成し、建物のプログラムであるクラスルーム&オフィス、リーガル・クリニック、法律図書館という3つの空間に分節。さらに建物中心部を垂直に吹き抜ける3つのヴォリュームをコネクトさせる、”グリーン・ストーク”と呼ばれる狭いアトリウムを擁している。 このアトリウムはプログラム・スペース群の連結空間であることに加えて、ロビーを初め、ふたつのコーヒー・バー(フォーラム・レベルと6階)、気軽なワークスペースやミーティング・スペースなどを包含している。 上訴模擬法廷は学生の練習用であり、講義やイベント用でメイン・ロビーより1階下に配されている。ガーデン・レベルにある公共のイベント用のフォーラム・スペースは建物北側にある外部のサンクン・ガーデンに面している。このガーデンは北側高速道路からの騒音を、コンクリート擁壁と水の流れで遮断し、西側のオリバー通りと東側の新しい模擬法廷のグリーン・ルーフ間のアーバン・リンクを創出している。 建物のファサードは3つの異なるクラッディングで覆われている。ベーニシュ・アルキテクテンの強みは、サステイナブル・デザインに定評がある。ここでの外壁クラッディングではその実力を遺憾無く発揮している。オフィス&クラスルーム部分はガラス+アルミで、所々パンチング・アルミ&ソリッド・アルミ。パンチングの開口部は自然換気が可能で、全てのガラス開口部は外部に自動換気ブラインドを装備するとう周到さ。 図書館部分の外壁もガラス+アルミニウムのカーテンウォールだが、ここでは壁面の70%がセラミック・フリットで直射光を遮断。パネルの半分はセラック・フリットされ、残りの半分は従来のグラデーション・タイプ。さらにそれが高さ半分の丈の壁が1枚おきに連続するという複雑さ。第3のアトリウムの壁面はスティール・フレームによる多層に渡るガラス・カーテンウォール。各階には操作可能なフラップがあり自然換気ができる。 「ボルチモア大学ジョン&フランセス・アンジェロス法律センター」は、地球温暖化軽減と気候変動に左右されない空間づくりに挑戦した初めての試みだった。LEEDのプラチナム賞を意図した建物は、米国のクールルーフ省エネ基準(ASHRAE 90.1-2004)の43%の省エネ・コストとなっている。その上敷地エネルギー消費が、年間40kBtu/sf(約125kWh/㎡)という低さも売りだ。厳しい米国省エネ基準をクリアするドイツの設計集団、ベーニッシュ・アルキテクテンの懐刀といえるサステイナブル作品である。
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