ザ・アイスバーグ(デンマーク、オーフス)
Design : JDS Architects+CEBRA+SeArch+Louis Paillard
設計:JDSアーキテクツ+CEBRA+SeArch+Louis Paillard 連立する驚異的な氷山の峰々 |
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コペンハーゲンとブラッセルを本拠にして世界的に活躍するJDSアーキテクツは、ジュリアン・ド・スメットが率いる建築家集団。スメットはかつてデンマークのビヤルケ・インゲルスと組んでPLOTを率いていたが2006年1月に解散し、スメットはJDSアーキテクツを、インゲルスはBIGを立ち上げた。両者は共にロッテルダムのOMAで修行した若手建築家で、「VMハウス」「マウンテン・ドゥエリングス」などの先端的作品を残して話題となっていた。
ここに紹介するJDSアーキテクツの集合住宅「ザ・アイスバーグ(氷山)」は、デンマークのオーフス湾に面したオーフス・イーストと呼ばれるハーバーフロントにある。しかも建物は、ハーバーフロントの最先端部という一等地を占める208戸の集合住宅だ。他の疲弊した工業的港湾施設と同様、かつてのコンテナ港であったオーフス湾は、近年活気に満ちた新しいエリアとして変貌しつつある。 ジュリアン・ド・スメットが生み出した「ザ・アイスバーグ」発想の原点は、オーフス湾を見晴らすスペクタキュラーな景観をもつ素晴らしい敷地ロケーションだった。その結果各住戸からの海への眺望や自然採光を最大にすると同時に、陸側のアーバン・コンテクストを尊重することが目論まれた。 閉鎖的な建築ブロックが支配的であったマスタープランの代わりに、「ザ・アイスバーグ」はL字形プランの4棟から成るレイアウトを採用している。このため棟間に配されたストリート・スペースが海に向けて開かれており、最適な昼光条件を確保し、オーフス湾へのワイドな景観を取得している。建物のヴォリュームは分割され、ギザギザな屋根形態はノコギリのようだ。 屋根は上昇して峰をつくり、また下降して谷間をつくっている。常に視線を屈折させ流れ行く多数の氷山のように、「ザ・アイスバーグ」は個々のヴォリューム越しにヴィジュアル・パッセージ(視覚の通路)創造している。このため後方棟の住人も素晴らしい水景色を楽しむことができる。 個々の建物を峰と谷間に分割するコンセプトは、建物のスケールを周辺環境とインテリア空間に適応させるよう貢献している。この集合住宅コンプレックスは内向的な街区として考えるのではなく、より多くの建築的魅力をもつオープン・ストラクチュアとして経験されるよう意図されている。 建物のある部分ではシーサイド的性格とスケールを得るために、建物はストリート・レベルへと押し下げられ、別の部分ではより都市的な性格を創出するために高く引き上げられている。かくして都市と海はひとつの共通するイディオムで繋がれている。このようなシンプルなアルゴリズムから派生した驚異的なフォルムは、多数の異なる住戸タイプにフィットすることを可能にしている。 住戸形式は2層のタウンハウス・タイプから、手頃な小振りのフラット、そして最上階のピーク(峰)にある高級なペントハウスまである。異なるバルコニーを持つ住戸群、異なる形態、異なるオリエンテーション、分譲住戸あるいは賃貸住戸といったバラエティは、活気あるローカル・コミュニティを形成する社会的に多様な都市環境の創造を意図したものだ。「ザ・アイスバーグ」コンプレックスは、単なる集合住宅ブロックのシリーズものではなく、ひとつの界隈となっているのが素晴らしい。 |
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