リオデジャネイロ・アート・シティ(ブラジル、リオデジャネイロ)
Design : Christian de Portzamparc
設計:クリスチャン・ド・ポルザンパルク リオに咲いた浮上する舞台芸術の殿堂 |
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ブラジルのリオデジャネイロは今年の6月は大変忙しい。ワールドカップが1950年の大会以来64年ぶりに開催されるし、そのためマラカナンのサッカー・ドームは増築中で大わらわだからだ。そんなスポーツ施設に対し、こちらは大規模な文化施設「リオデジャネイロ・アート・シティ」が完成した。2014年同市は文化施設とスポーツ施設の文武両道の建築が完成し、南米の大国として素晴らしい都市づくりに大きく踏み出しはじめた。
建物はリオデジャネイロの海と山の間にある幅14kmほどの平野の中央部にある。バッラ・ダ・トゥカと呼ばれるこのエリアは、近年新しいリオの中心街区として開発されてきたところである。この界隈のランドスケープは、強いアーバン・ランドマークや大きなパブリック・スペースもない非常に特徴のない土地柄である。 「アート・シティ」の敷地は、このエリアで交差する2本のハイウェイにより構成されている。ブラジリアの都市計画コンペで、オスカー・ニーマイヤーと組んで勝利したルシオ・コスタが設計した2本の大動脈が交差する巨大なロータリー部分で、まさに新都市の中心的核となる施設として計画された。 建物のストラクチュアは、地上10mに浮く巨大なRC造のテラスの上に構築されている。それはメガ・ストラクチュアに内包された小さな都市とも言えそうだ。造園家フェルナンド・チャンセルがデザインしたトロピカルなアクアティック・ガーデンの上に浮いており、リオの海や山をワイドに見晴らすことができる。 その他にも500席の室内楽ホール兼ポピュラー・ミュージック・ホール、メディア・ライブラリーはひとつだが、映画館は3室、リハーサル・ルームは10室、ダンス・スタジオ、展示ホール、レストランなども複数配備されている豪華さだ。ブラジル・シンフォニック・オーケストラの本部も入居している。 延床面積90,000㎡におよぶ巨体は、ブラジル建築のアーキタイプへのオマージュを表現したもので、地上から浮いているのがその証左だ。テラスのフロア・スラブとルーフ・スラブ間の大空間には、ポルザンパルクがパリの「音楽都市」で披露した特有の曲面壁が縦横に展開し、多数の音楽空間を内包している。それはまさに繊細にカーブするヴォリューム群と、大きく開け放たれたヴォイド空間の相互作用を演じている印象だ。 「リオデジャネイロ・アート・シティ」はパブリック・シンボルであり、大リオデジャネイロ圏の新しいランドマークになっている。それは地上に浮遊し漂う大きな視認性をもつアーバン・シグナルだ。建物はシエラ・アトランティカ山脈とリオの海岸線の美しい曲線を反映している。その形態は平面図を見ると一目瞭然で、長く緩やかに延びた曲面壁で囲まれた大小の空間群のインタラクションそのものだ。 建物は、アイルトン・セナ通りに列車で到着する旅行者にとっては、バッラ・ダ・トゥカ地区のフロント・ゲートとなっている。「リオデジャネイロ・アート・シアター」は、無味乾燥で広大な大地に生まれたブラジル舞台芸術の殿堂であり、新都市発展の強力な牽引力として君臨し始めた。 |
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