Turbulences FRAC Centre(France,Orleans)
タービュランス・フラック・センター(フランス、オルレアン)
Design : Jakob & MacFarlane
設計:ジャコブ&マクファーレン
トポグラフィカル・サーフェスをもつ異常突起物
ジャコブ&マクファーレンがかなりオーガニックな建築を設計し続けてきたのは、初期の「ポンピドー・センター」屋上のレストラン「ジョルジュ」や、近年の「オレンジ・キューブ」などで知られている。今回の「タービュランス・フラック・センター」は、名前がタービュランス(乱気流)と言うくらいだから、その形状は想像に難くない。

建物はフランスのオルレアンにある「フラック・センター」を増改築したもので、ジャコブ&マクファーレンはパラメトリックなデフォルメと、既存建物のグリッドの表出をベースにしたダイナミック・フォームを出現させた。周辺コンテクストと相互作用を醸す強い建築的シグナルとして、この流動的ハイブリッド・ストラクチュアは、敷地内の中庭中央部にガラスとメタルによる3つの異常突起物を生み出した。

突起体の原理は周辺領域へと拡大されている。中庭はパブリックな場所、すなわちトポグラフィカル・サーフェスとして扱われており、それにより全ての建物とリンクし、「フラック・センター」のプログラムを内包している。このサーフェスは敷地における自然の高低差を描きながら、建物のエントランスへと通じている。さらに「タービュランス」自身のヴィジュアル・ダイナミックスを補強し、オーガニックな発展的動きによって、都市方向に向けて拡大して行く。

メイン・ビルのひとつとロシェプラット通り沿いの塀を撤去したことにより、新しい建築コンプレックスを都市に向けて大きく開放することができた。新たなアーバン・ファサードにより、「フラック・センター」はオルレアンの文化的アーバン・ネットワークにコネクトされ、中庭は単なる広場以上のものになった。

新しい建築の存在は、この文化的センターの敷地における重心となり、新しいストラクチュア、新しい幾何学となった。この建築的増築は、「フラック・センター」とそのコレクションのアイデンティティーを反映させたプロトタイプ的な広がりを見せて、中庭に力強く展開されている。「タービュランス・ハウス」のガラスとメタルの異常突起物は、パブリックなレセプション・エリアを中心に配し、既存の建物群にある展示エリアへと来館者を誘導する動線を擁している。

その構造的複雑性によってもたらされる建物の限界寸法は、敷地内全ての建物のスケールに転写されている。外壁のアルミ・パネルや木製のインテリア・パネルを支持する2次構造体が、メインとなるチューブ状のメタル・ストラクチュアを補強し、特異なエレメントによってユニークなフォルムを形成している。

「タービュランス」の下部はプレファブのコンクリート・パネルで覆われ、建物と中庭の連続性を生み出している。旧棟と新棟というふたつの建築的オーダーにおける明らかな齟齬は、「タービュランス」による突起的印象で相殺されている。軽いプレファブ構造部分は、全面的にデジタル・ツールでデザインされた。オンサイトでの組み立ての前に、工場でチューブ類を溶接したトライアル・アセンブリーが行なわれた。

複雑な切子面的ジオメトリーを持つこの建築的インターヴェンションは、材料を露わにした旧棟である文化センターの対称性と合理性を背景にして、際立った相貌を見せている。都市の盛衰に敏感な生きた建築として、「タービュランス・フラック・センター」は形態的な実験性へ、学問分野のハイブリダイゼーション(混成作用)へ、そしてディジタル時代に発生する建築の変化へと捧げられた、ひとつの場所のエンブレムとなった。

 
図面
 
建築家
   


©Jean Ber

■ジャコブ&マクファーレン略歴

ドミニク・ジャコブ(女性)

1990年 パリ第1大学にて美術史を学ぶ
1991年 パリ・ヴィルマン建築大学卒業
1994-2004年 パリ・ヴィルマン建築学校講師
1998-1999年 パリ建築大学客員教授
2001年 黄金コンパス賞(伊)
2002年 フランス建築アカデミー賞
2003年 フランス文芸シュバリエ章
2013年 トゥールーズ市コンサルタント・アーキテクト

ブレンダン・マクファーレン(男性)

1984年 南カリフォルニア建築大学を卒業
1990年 ハーヴァード大学建築学科大学院で修士号を取得
1996年 ベルラーヘ・インスティテュート客員教授
1996-1998年 ロンドン大学バートレット校講師
1998~1999年 パリ建築専門大学講師
2001年 黄金コンパス賞(伊)
2002年 フランス建築アカデミー賞
2003年 ベルラーヘ・インスティテュート修士課程客員教授
2003年 フランス文芸シュバリエ章
2006-2007年 南カリフォルニア建築大学で教鞭を執る
2007年 ハーヴァード大学大学院客員教授
2008年 フロリダ大学客員教授

 


■代表作

主な作品­­に、Tハウス、レストラン・ジョルジュ、ポントードメール劇場の修復、ルノー・スクエア・コム、セーヌのドック、リチャード現代美術財団、レクラ劇場、ルノー・コミュニケーション・センター、100戸の社会住宅、RBCショールーム、スイス文化センター図書館&オフィス、ロウイー図書館、ピンク・バー、タービュランス・フラック・センター、グルモン・パルナッセ・シネマ(進行中)、ノイジー・ル・セック音楽&ダンス学院(進行中)など多数。

 

Photos & Materials : Courtesy of Jakob & MacFarlane