大連国際会議センター(中国、大連)
Design : Coop HImmelblau (Wolf D. Prix)
設計:コープ・ヒンメルブラウ(ウルフD. プリックス) メタリック・モビー・ディック |
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大きな中国大陸のなかでも圧倒的に親日的で、反日運動が起きないと言われる大連にコープ・ヒンメルブラウ設計の「大連国際会議センター」が完成した。建物は重要な港湾、貿易、工業そして観光都市としての大連の伝統と、夢多きモダン大連の将来性を反映させたものが求められた。
建物のフォルムは、モダニスト建築におけるフローティング・スペース群を擁し、現今の会議センター的タイポロジーがもつ、合理的ストラクチュアと組織を融合させた形態言語を用いている。その実際のフォルムは、陸に上がった巨大な鯨のように見える。 大連は遼東半島南端に位置する重要な海港都市で、工業、貿易、観光の中心的ステータス担っている。同市は現在沿岸地区の工場跡地や埋立地の開発が盛んで、今後10年間で都市の様相は大きく変わろうとしている。過密な都市エリアからコンテナ港を移設し、国際的客船の寄港地とする。また新しいビジネスセンターを埋立地区につくり、特別経済地区と海上をまたぐ橋で繋ぐなどの計画がある。 ファサードを突き破るキャンティレバーの会議室スペース群が空間的に変化する多面的なビルディング・ヴォリュームを創出し、近隣環境とは一線を画した表情を生み出している。多数のシアターと会議スペース群は、コーン形のルーフ・スクリーンで覆われている。頂部にある巨大な円形トップライトからの調光された自然光が、入館者へのオリエンテーションやバラエティのある雰囲気づくりに役立っている。 さて陸に上がった中国の鯨はどうか。約91,000㎡の巨体を海側と陸側から見た長手側立面形は、大きな尻尾はないものの巨大な鯨そのものの形態。ハーマン・メルヴィルの名著『モビー・ディック(白鯨)』の主人公を想起させる”メタリック・モビー・ディック”だ。建物は曲面状の大屋根に対し、外壁に当たる側面部分には3角形の開口部と、エラのように突出した部分には横長なストライプ状の開口部がある。 建物にはメインとなる会議センターをはじめ、シアター、オペラハウス、展示センター、地下駐車場、配送センターなどがある。会議スペースやパフォーマンス・エリアは、エントランス・ホールの上部15.3mのところにあり、1,600席のグランド・シアターや2,500席の多目的な会議ホールは建物の中心部にコア的に配置されている。 より小さな会議スペースはこのコアの周囲に配され、ほとんどの会議スペースや通路には自然光が導入されている。シアターと会議スペースが流動的につながるこのメイン階には、”スクエア(広場)&ストリート(通り)”というアーバン・ストラクチュアが組み込まれている。これにより館内オリエンテーションが明快になり、気楽な散策や出会いの場所、飲食所などへのアクセスが容易となっている。 海側のメイン・エントランスは、今後予定されているクルーズ・ターミナルを含む将来開発計画へのコネクションにも対応している。巨大な”メタリック・モビー・ディック”に内包されたマルチな機能が、親日的な大連の都市をますます文化的に発展させることであろう。
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