シェラトン湖州市温泉リゾート(中国、湖州市)
Design :Ma Yansong / MAD
設計:マ・ヤンソン/MAD 湖面に浮かぶシュールな幻像 |
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上海から西へ150キロほど。湖州市は古くから「絹の府、魚米の郷、文物の宝庫」として知られた文化的な都市だ。太湖に面した同市は、市内に張り巡らされた水路が交通の便に一役買っている。そこに架かるアーチ・ブリッジ(太鼓橋)が、同市のいい風物詩になっている。
この温泉リゾートはシェラトン系のホテルで、大河揚子江のデルタ地域に位置している。27階建て高さ102mの巨体は、一部が岸辺に足を降ろし、一部が水中に足をいれている。というのは建物形態が巨大なドーナツ形で、中心部の穴が楕円形を描き、最下部の2層分が水に浸っているため、ドーナツの二つの胴体部分がそれぞれ岸辺と水中に分かれて基礎部分を形成しているのだ。 延床面積約60,000㎡のホテルは、321の客室、44のスィートルーム、39戸のヴィラを擁し、さらにウェディング・アイランドなどという結婚式用の島もあるマルチなファンクションを装備している。ドーナツ状の躯体のため、すべての客室からは素晴らしい水景色が満喫できる。 建物のファサード・スキンは、微細なリング状のホワイト・アルミとガラスで構成されている。これが太陽と湖からの反射により、昼間はクリスタルのように透明になる。夜の帳が降りると、ドーナツ形のフォルムは帯状に装備されたLEDライティングで輝き出す。しかも種々の色合いに変化していき、ファサードが刻々と表情を変えていく素晴らしさ。その目映いばかりの輝きが湖面に幻想的な姿を落とす。シュールな魅力をたたえたその鏡像は、建物のシンボルとなっている。 中国の歴史を紐解くと、人々は常に自然との共存を意図した生活をしてきた。これこそが中国の文化と伝統の本質である。湖州市は伝統的な水墨画で有名であり、水景色の非常にきれいなところとして知られている。町に数多くの見られるアーチ・ブリッジは、同市における伝統建築のキー・エレメントだ。 円形の建物は、構造デザイン的には非常に難しい大きな挑戦であった。そこで鉄筋コンクリート製コア・チューブが採用された。これは軽量かつハイ・キャパシティにつくられ、耐震性にも優れた構造であり、同時に工事中の環境汚染を極力減らすことが心掛けられた。 湾曲したメッシュ・サーフェス構造が建物を非常に堅固にしており、これにより橋のようなブレース・スティール・ストラクチュアが可能になり、最上階でふたつの円錐形構造が巧みに合体された。 「シェラトン湖州市温泉リゾート」はシティ・ホテルでもあるため、多くのビジネス関係や私的なイベントや行事が開催される。そのためハイエンド・ユーザーを意識し、ロビーの床はアフガニスタン産のヒスイやブラジル産の虎目石を使用して豪華なインテリア・デザインを演出している。 スケールの大きなイベントは、ゴールデン・トーンをあしらったグランド・ボールルームで開催し、小規模なイベントは22階に数室あるミーティング・ルームを使用する。豪華な結婚式には、先述した結婚式専用のウェディング・アイランドという広さ1,600㎡の島が用意されている。静かな水景色を背景にした人工島は、あたかも水に浮かんだフローティング結婚式場。メモリアルな素晴らしい挙式を可能にしている。 |
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