釜山シネマ・センター(韓国、釜山)
Design : Wolf D. Prix (Coop Himmelb(l)au)
設計:ウルフD.プリックス(コープ・ヒンメルブラウ) 超巨大ルーフに覆われた韓国映画の殿堂 |
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コープ・ヒンメルブラウの韓国デビュー作となる「釜山シネマ・センター」は、彼ら自身が長い間関わって来たひとつのテーマ、”建築エレメントとしての屋根”に挑戦した作品である。すでにルネッサンスやバロック時代に、屋根はキューポラへと変形され、特殊な意義を供えたものとなった。ところが近代では、オスカー・ニーマイヤーやル・コルビュジエが、もはや屋根を単なる防御のエレメントだけではなく、もっとも多種に渡るコンセプトのフレームになると定義した。
例えばリオデジャネイロにある「ニーマイヤー自邸」においては、屋根はもはやフロア・プランに沿ったものではなく、周辺景色や自然へのヴィスタをフレーミングしている。コルビュジエの「ユニテ・ダビタシオン・マルセイユ」のそれは、彫刻的なアーティキュレーションにより、完璧なランドスケープとなっている。 このプロジェクトの基本的なコンセプトは、オープン空間とクローズド空間、またパブリック空間とプライベート空間それぞれの複合性についての表現であった。映画館が山のような建築の中にあるのに対し、センターのパブリック・スペースは、アウトドア・シネマと、レッド・カーペット・エリア(レセプション・エリア)と呼ばれる巨大なパブリック・スペースにシェアされている。 レッド・カーペット・エリアは実質的には3次元的になっている。というのは、ダブル・コーン(2重円錐形)に沿って、来賓をレセプション・ホールへと導く空中ランプが横切っているからだ。ふたつのエリアはそれぞれ巨大な屋根で覆われており、そのひとつは60m×120mもありサッカー場の広さに匹敵する。さらにすごいのは、85mものキャンティレバーになっているのだ。 建物は韓国・釜山のスヨング川沿いのBIFF(釜山国際映画フェスティヴァル)パークに完成した巨大な映画イベント施設。全体で60,000㎡の中に、パブリック・パフォーマンス、イベント、エンターテイメント、コンヴェンション、ダイニング、管理部門を含んでいる。 シネマ・センターには1,000席の多目的シアター、3面スクリーン400席シネマ、3面スクリーン200席のシネマがふたつの、計4つのシネマがある。この建物は、ダブル・コーンからでた空中ブリッジによって、反対側のBIFFヒルズに接続されている。BIFFヒルズはいわゆるコンベンション・センターだ。 この両者を空中ブリッジで連結ささせるというダイナミックなストラクチュアは、コープ・ヒンメルブラウが「BMWヴェルト」で用いたダブル・コーンだ。これはさらに先述のように、サッカー場に匹敵する広い屋根を85mものキャンティレバーで支持する優れものだ。 今韓国は海外建築家の主導による開発ラッシュが盛んだ。ザハ・ハディド、ダニエル・リベスキンドなど、デコン調の建築家が多く、コープ・ヒンメルブラウもその一翼を担っている。巨大ルーフの圧倒的は迫力を見せる「釜山シネマ・センター」は、韓国映画文化の発展に寄与すべく生まれた映画の殿堂である。 |
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