レフレクションズ・アット・ケッペル・ベイ集合住宅(シンガポール)
Design : Daniel Libeskind
設計:ダニエル・リベスキンド 会話する集合住宅タワー |
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今世界で建築的にホットなのが、言わずと知れたシンガポールだ。モシェ・サフディの「マリーナ・ベイ・サンズ」を筆頭に、世界の建築家が目白押しで参集し、建築デザインを競っている。ニューヨークのグラウンド・ゼロのマスタープラン・コンペを制したダニエル・リベスキンドも、スケールの大きな集合住宅プロジェクトを完成させた。
「レフレクションズ・アット・ケッペル・ベイ」という長ったらしい名前は、“ケッペル湾の鏡像”が文字通りの訳だが、それでは意味が通らないので集合住宅を付け加えた。ケッペル湾沿いに建つ建物は水面にその影を映しており、その鏡像の英語発音を建物の名前としている。 ケッペル湾はシンガポールの歴史的なケッペル・ハーバーの入口に位置しており、ダウンタウンから車で5分ほどという至便の地にある。「レフレクションズ」は、かつての工業地域であるケッペル湾岸を再開発する計画の中では頂点をなすプロジェクトだ。光溢れる700mを超える海岸は、フェイバー山、ラブラドール公園、ケッペル湾の自然美に囲まれた素晴らしい恵まれたエリア。 二つとして同じ形や同じサイズのフロアがないのが特徴だ。そのため、各階に異なる景観や雰囲気を与えている。さらに目立つ特徴として、高層棟が直線的な垂直でなく、少し弓形に弧を描いて屹立している点だ。これは向かい合う2棟があたかも会釈をしているか、会話をしているかのような印象を与えて面白い。 リベスキンドの集合住宅デザインにおける特徴としてあげられる、画一性の払拭や高密度性の排除は、ここでも遺憾なく発揮されている。地価の高いシンガポールでは、高密度なデザインこそがそれを埋め合わせるまっとうなメソッドと考えられている。だがリベスキンドは低層棟を水際に配置し、高層棟をその背後に建て、風通しのよい光溢れるグルーピングを構成して高密度化避けることに成功している。 高層棟は41階建て3棟と24階建て3棟からなっており、外壁はアルマイト・パネルとラージ・サイズのガラス開口部というハイテクな構成だ。タワー群の高低差と相まって、外壁面は変化する傾斜面によって、およそ無限とも思える輝き(レフレクションズ)を放っている。さらにタワー間の隙間から見える水平線と、タワー群自身のシャープなシルエットが、建物全体に強いヴィジュアル・インパクトを与えている。 屋上も魅力的だ。鋭利な3角形をなすスティール・フレームを頂いたタワー頂部は、緑豊かな静かなガーデンとし、住人のオアシス的な憩いの場所となっている。加えてタワー同士をつなぐ9本のスカイ・ブリッジがランドスケープされ、近隣の山々や海へのパノラミックな眺望を可能にしている。 眼下の美しい入江に多数のヨットが停泊し、周囲は豊かな緑と青い海。リベスキンドは「シンガポールは文化、自然、都市の調和の取れたパラダイムだ」という。彼はダウンタウンも近いという恵まれた敷地に、この想いを込めたスペクタキュラーなプロジェクトを見事に完成させた。
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