ブック・マウンテン(オランダ、スパイケニッセ)
Design : MVRDV
設計:MVRDV 快適なサステイナブル・ミクロコスモス |
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常に斬新なアイディアとフォルムで、現代の都市や建築に不断の挑戦を試みてきたMVRDVが、自国オランダにアーバン・スペースへの強かな刺激をもつ楽しい建築をつくった。
オランダ西部にあるサウス・ホランド州のスパイケニッセ市。人口75,000人ほどのこの街に、MVRDVがユニークな図書館をデザインした。「ブック・マウンテン」と呼ばれる建物は、文字通り“本の山”というように、寄棟の屋根形だが妻側から見ると、山のごときシャープな峰が屹立しているように見える。 さてこの図書館、スパイケニッセのこのエリアでは文盲率が10%にも及び、読書を助長するためにデザインされたもので、視覚的に目立つ存在はコミュニティにとって大きな意義をもっている。ガラス張りのスキンの内側には、それこそ本物の“本の山”があるのだ。 図書館は4方向からすべて見えるように建てられており、特に隣接するマーケット・スクエアからは巨大なガラス・マウンテンが、ドーンと控えている印象だ。モニュメンタルなガラス・スキンのため、太陽による本へのダメージは、貸出しによる磨耗のため、本の寿命を4年と設定しているので問題なしとされている。 スパイケニッセの中心部に位置する「ブック・マウンテン」は延床面積9,300㎡で、古い村の教会に隣接したマーケット・スクエアにある。建物は図書館の他に、環境教育センター、チェス・クラブ、オーディトリアム、会議室、商業施設なども含んでいる。 図書館の外観は、形態と材料において伝統的なオランダの農家のそれを想起させる。この街の農業史のリマインダーともなる姿は、過去40年で農村から“ヴィル・ヌーヴェル(ニュー・タウン)”へ変貌してきた軌跡を物語っている。 視覚的にかつての村の中心部と連続し、また商業プログラムと図書館を分けるために、レンガが近隣地区の地上面と、図書館のピラミッドの心臓部分に使用された。図書館はこのコア部分の上に、その床・壁・天井、さらにドアも同じレンガでつくられている。この妥当性のある材料配分が、ガラス・フードの内側には図書館が見え、レンガの背後にはその他の施設があるという差異をコミュニケートすることで、図書館のパブリック・ステータスを高めている。 街の農業史を今に伝えるエレメントがまだある。図書館の書棚は植木鉢をリサイクルした材料が使用されて、その経済性と耐火性で重宝されている。その結果、書籍にとっての完璧な背景になると同時に、手摺やパラペットをはじめ、インフォメーション・デスク、バーなどにも使用されている。 木造トラスとガラスによるバーン形の透明空間は、ほとんどオープン・エアの図書館といった佇まい。自然換気、サン・スクリーン、ダブル・スキン、地熱利用などにより、オール・シーズン快適なサステイナブル・ミクロコスモスが生み出されている。 「ブック・マウンテン」は、スパイケニッセの中心市街の活性化計画の一翼を担う目的でつくられた。MVRDVは同様の目的で、近隣に42戸の集合住宅をこのエリアの住宅建設会社と協働して設計している。
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