ポドチェトルテック・スポーツ・ホール(スロヴェニア、ポドチェトルテック)
Design : Enota
設計:エノタ 鮮烈なレッド・カラーとブラック・ジオメトリック・フォルム |
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スロヴェニアの首都、リュウブリャナを拠点にアクティブな建築活動を展開する同国の代表的な若手建築家グループ、エノタ。ランドスケープ・デザインと建築デザインをミックスしたような設計が彼らの特徴だ。
「ポドチェトルテック・スポーツ・ホール」は、やはりエノタが設計した「テルメ・オリミア温泉コンプレックス」があるポドチェトルテック市に至る道路沿いにある。道路と建物の間には、既存のアース・バンク(盛土のような土手)があり、これが道路からの騒音をシャットアウトするサウンド・バリアーになっている。 メイン・エントランスは、アース・バンクを介して幹線道路側を向いている。そのためバンクの内側にあるアクセス通路へは、バンクの両端にあるアクセス・ポイントを曲がって敷地内のアクセス通路に入り、それから駐車場へと至る。 既存の伝統的な建物に比べると、新棟はサイズがかなり大きいので、既存のヴァナキュラー建築に対し、対等な位置関係をとることは不可能だ。そこで幹線道路に隣接して建っている大規模な「テルマリヤ」と呼ばれる温泉コンプレックスを参照することになった。 両建物の間には、一種のダイアローグ(対話)が確立された。「テルマリヤ」が、開放性、明るさ、色彩を楽しく用いているのに対し、「スポーツ・ホール」のほうはより厳格で、十分重々しく、モノリシックなストラクチュアなのだ。 それは正にふたつの機能を持つ建築であり、そのような機能性が建物の詳細なデザイン・ベースになっているのは言うまでもない。デザインのメインは“赤いジュータン”を敷き詰めたようなアクセス通路だ。これにより来場者は、内部で開催されているイベントへと誘導される。ふたつのアクセス・ポイントをつなぐアクセス通路は、既存のアース・バンクを切り開いてつくられた。 デザインは空間的な変則性を利用し、既存のアース・バンクによって道路からの直接的なノイズ等が、メイン・エントランスから流入するのを防いでいる。道路側をアース・バンクによって空間的にデザインされ限定されているが、アクセス通路は建物の反対側にも、建物に沿ってデザインされている。 ヴィヴィッドなレッド・カラーと魅力的な形態で仕上げられた建物は、エントランスへ向かう来場者に対し広く対峙する。エントランス前の広場のような性格をもつ赤いエントランス・スクエアが徐々に来場者を包み込み、彼らをエントランスへと誘導し、さらに内部ホールへと導く。 夜間、ファサード上にデザインされたライティング・オーナメントが、アクセス通路や駐車場の厳粛性を強調している。暗くなるに従って、開口部の外側に装備されたパンチング・クラッディングが、花柄のパターンを浮き上がらせる。逆に昼間は、不必要な太陽光をカットしている。これは内部の活動を直接的に外部に反映させたデザインだが、イベントそのものや建物の魅力をプロモーションさせるために、エノタが考案したグラフィカルな効果をもつデザインだ。 この「スポーツ・ホール」は、鮮烈なレッド・カラーとクールなブラック・ジオメトリック・フォルムが織りなす空間構成と、建物を取り巻くエノタ流ランドスケープ・デザインの相乗的効果が魅力だ。 |
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