コーネル大学ミルスタイン・ホール(ニューヨーク、イサカ)
Design : Rem Koolhaas(OMA) & Shohei Shigematsu(OMA NY)
設計:レム・コールハース(OMA)&重松象平(OMA ニューヨーク) マルチ・アクティビティを可能にするドーム空間 |
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アメリカを代表する建築の名門校のひとつ、コーネル大学といえば、建築的にはプリツカー賞を受賞した3名もの建築家がキャンパスに作品を残している。リチャード・マイヤー(米)、故ジェイムズ・スターリング(英)、I.M.ペイ(米)の3名。その他卒業生には、SOM創立者のひとりナサニエル・オーイングス、ピーター・アイゼンマン、アーサー・ゲンスラーなどの著名建築家を輩出した名門だ。
そして今回の「ミルスタイン・ホール」は、プリツカー賞受賞建築家レム・コールハース主宰のOMAニューヨークの作品だ。コーネル大学建築・芸術・都市計画学部(AAP)のここ100年における初めての新設ビルである。しかし建物は独立した建築ではなくAAPの増築ゆえに、旧AAPと合体したもので、相互に連結された内外部空間をもつ統合化コンプレックスとなった。 「ミルスタイン・ホール」の増築面積は4,400㎡でスタジオ群をはじめ、ギャラリー・スペース、クリティシズム(講評)・スペース、初のAAP専用オーディトリアムといった懸案の空間群が新設された。 既存のAAPビルはキャンパス北端の4つのビルに分散されており、芸術学部棟群の背後を形成してきた。昨今建築スタイルの多様化が著しいが、4棟の建物はリニアな形態で、廊下形式いうシンプルな唯一のタイポロジーをシェアしていた。 「ミルスタイン・ホール」が、ネグレクトされてきたこれら芸術学部棟群の北側の再考を促し、同時にAAPのインターディシプリナリィなポテンシャルを、最終的に開発するチャンスを生み出したことは重要だ。 建物はOMAニューヨークのパートナー、重松象平氏が担当したもので、粋を凝らした先進的なアイディアが詰まっている。建物は地下1階、地上2階建て。2階部分がユニバーシティ・ストリートの上部に、14.6mのキャンティレバーで長さ45.7mに渡って突出しているのが外観上の特徴だ。 旧棟から水平に延びてキャンティレバーとなる2階はガラス張りで、V字形に傾斜した内部の構造コラム群が踊っているように見える。この“ダンシング・コラム”は、2階の床スラブと屋根スラブを連結・補強して、キャンティレバーに対処したものだ。 2階には2,300㎡の広さをもつフレキシブル・スタジオ・スペースがある。これは各セメスター当り16の建築スタジオ(学生200人)のベースとなる。2階のスタジオ・スペースは、ベンケイ草が植え込まれたグリーン・ルーフをもち、41個のトップライトを穿ち、自然光を大量に導入するサステイナブル・デザインで非常に明るい。 1階と地階には表面積480㎡のRCドームが丘のように盛り上がって不思議な表情。このコンクリート打ちは大変で、12時間ぶっ通しの打設1回で終えたという。ドーム内は講評のためのスペース。さらにドームが地下レベルから1階へと上昇していく斜面に、253席をもつオーディトリアムを設けている。OMAの「クンスタル」を彷彿とさせるデザインだ。このユニークなドームは、その最後部が2階床スラブに接触してそれを支持している。ドームの一方の端部は、キャンティレバー下のガラス壁面を突き破って外部に露出。ドーム形ガラス開口部を通して内部の活動を見せるといった芸当を披露している。 さらにドームをRCの空中ブリッジが貫き、ドーム内のマルチ・アクティビティを俯瞰することができる。シンプルな外観の「ミルスタイン・ホール」のセンター・ピースは、内部のドーム空間と見た。
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