グラスゴー・リバーサイド美術館(イギリス、グラスゴー)
Design : Zaha Hadid
設計:ザハ・ハディド 川のメタファーを持つ流体建築 |
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2011年6月1日にオープンした「グラスゴー・リバーサイド美術館」は、グラスゴーのクライド川のバンクに位置しており、昔からグラスゴーをグラスゴーならしめてきた輸送、エンジニアリング、造船の歴史的遺産を展示する美術館だ。
唯一の女性プリツカー賞受賞者であるザハ・ハディドの近作である建物は、7,400万ポンドをかけた彼女によるイギリスで初めてオープンした本格的な建築作品である。3,000点以上の展示品と、150以上のインタラクティブ・ディスプレイを装備している美術館だ。カテドラルのようなストラクチュアの建物は、マッシブな蒸気機関車から1900年代の都市道路の再生に至るまで、大英帝国第2の都市のイノヴェーションとアンビション(技術革新と野望)のショーケースとなる驚異的な展示空間を開示している。 建物は川側である南側ファサードが大きなガラス張りの前面開口部となっており、さらに驚くのはその上部にある屋根の妻側立面形である。波のようなシャープな褶曲線形の屋根は、俯瞰するとプリーツ状の溝が、川の流れのメタファーになっている。ドラマティックな南側ファサードの前のクライド川には、”グレンリー号”が係留されており、初めてこの都市の比類なきシップ・コレクションが展示され、ドラマティックかつアイコニックな国際的な船の終着地となっている。”グレンリー号”は、クライドの造船所で進水式を迎えた5隻の船のひとつで、今日イギリスに残る唯一の船である。 両端がオープンとなった建物は、トンネル的な形状で街側から川側へと連続している。しかしながら街側と川側の間のコネクションにおいて、建物は曲折しながら外部コンテクストから展示物の世界へと誘導していく内部ツアーを構成している。ここでは内部通路が街と川のバッファーとなり、展示のレイアウトによっては閉鎖的にもなり、開放的にもなりえる。このように美術館は、象徴的にも機能的にもオープンで流体的であり、それは深くグラスゴーの歴史のみならずその未来へのリンクをも確保するために、周辺コンテクストと内部コンテンツを結びつけている。訪問者は、展示物から展示物へと移動していくに連れて、外部コンテクストの感覚が漸次増幅してくる。 建物のデザインは断面的な突出や、曲折するリニアな通路に沿って妻側両端が開口部となっているのが特徴だ。この横断面の外観は、波やプリーツを象徴している。外部のプリーツは、サポート・サービスやブラック・ボックス展示に使用される。これにより無柱のオープンな中央空間は、美術館が所有するワールドクラスのコレクションを展示するに十分なフレキシビリティをもつことができた。 |
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