アルガンズエラ歩道橋(スペイン、マドリード)
Design : Dominique Perrault
設計:ドミニク・ペロー 公園の空中を飛ぶアーバン・イコン |
|||||||||||||||||||||||||||||||||
ソウルの「梨花女子大学キャンパス・センター」以後、近年大阪駅前にガラス張りの「富国生命ビル」を完成させ、アジアへの安定した基盤をつくりつつあるフランスのドミニク・ペローが、スペインのマドリードに彼のエンジニアリング作品としては処女作となる「アルガンズエラ歩道橋」を完成させ話題になっている。
70年代、マンザラネス川の両岸に沿って走っていたM30環状道路は、同市における都市ネットワークの重要な境界であった。2000年にマドリード市議会は、マドリード・リオ市にあるマンザラネス川バンクの都市再開発計画を発表。M30環状道路は、河岸堤の地下25mに埋設された。 M30の地下埋設により、2005年にマンザラネス川バンクの国際都市再開発コンペが実施され、ドミニク・ペロー・チームが勝利した。その結果、アルガンズエラ公園という新しい都市空間が生まれた。この公園は同市のアーバン・メッシュ(都市網)における重要な構成要素となっている。 ここでドミニク・ペローは、この新しい都市空間に、オリジナルなエンジニアリング的イコンを創造した。長さ250mを越える「アルガンズエラ歩道橋」は、歴史的なトレド橋とプラガ橋の間にあり、同市の文化的中心部へと連結している。 歩行者とサイクリスト用につくられた歩道橋は、ふたつのメタリック・コーンで構成されている。その機能は人々を対岸へ渡らせるのと同時に、橋の下に展開する広大な「アルガンズエラ公園」へ降りるメインのゲートを構成している。 埋設された環状道路のテクニカル・インフラを隠している公園は、不規則なトポグラフィをもっている。そういった地形を利用して、ふたつのコーン・ブリッジはカーブした丘の頂部で会し、公園の入口を形成するために、オフセットして配置されている。この丘には近隣を見晴らすテラスがあり、ここは有名なトレド橋を観賞するヴァンテージ・ポイントとなっている。 歩道橋はそのスケールにおいてダイナミックだ。南側コーンは長さ150mあり、北側のそれは128mだ。直径は両者共に、5mから12mへと変化する。それぞれのコーンは、それぞれの端部で2本の柱で支持されており、そのため歩道橋が宙に浮いているような印象を与えている。 スティール製の自律的構造であるメイン・ストラクチュアは、対角線状に交差するふたつのメタル・スパイラルがメインの構造だ。さらにその上に、シルバーに輝くメタリック・メッシュのリボンが螺旋状に絡みついて、歩行者を太陽や悪天候から守っている。このスパイラル・リボンは、「アルガンズエラ公園」にリズミカルでダイナミックな造形ラインを付加した。 メタリック・メッシュは、日によって橋の表情を変えている。それは透過・反射・半透明と変化する。昼間は日陰をつくり、夜間はランタンのように輝く。これらの現象を1回の訪問で体験するのは不可能だ。それはメタリック・メッシュが橋全体を“生きたオブジェ”と変えてしまったからだ。 ドミニク・ペローはこのメタリック・メッシュをかなり前に考案し、「フランス国立図書館」など数多くの作品で使用してきた自家薬籠中のデザイン・エレメント。2009年に完成した「マジック・ボックス」に継いで、ペローは同じマドリードで、またまたユニークなアイデンティティのあるアーバン・イコンを完成させた。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||
|