チェロキー・ミクストユース・ロフト(カリフォルニア州、ロサンゼルス)
Design : Brooks + Scarpa
設計:ブルックス+スカルパ ハイ・パフォーマンス・ロフト集合住宅 |
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ローレンス・スカルパと言えば、以前ピュー+スカルパを組んで「コロラド・コート」や「バーガモット・アーティスト・ロフト」などの話題作をLA界隈で発表してきたウエストコースト切っての集合住宅作家。今回はブルックス+スカルパというデュオで、「チェロキー・ミクストユース・ロフト」を完成させた。 スカルパ作品の特徴は、常にサステイナブル・デザインを指向することで、今回の「チェロキー」は、ハリウッド初のLEEDのプラチナ賞に輝いた秀作だ。 建物はファサード全体を、陽極酸化処理したアルミ・パンチング・パネルで覆ったものだが、単にそれだけではない。イギリスのアーティスト、パトリック・ヒューズの作品“パースペクティビティ”に啓発されたもので、そのコンセプトは非常に凝っている。ヒューズの絵は、鑑賞していると常に変化し物理的に動いているように見えるのだ。 「チェロキー」のメインとなる建築的特徴は、操作可能なダブル・ファサード・システムにある。住み手が自由にファサードのスクリーンを操作することで、ファサードそのものは住人の手によって、“ライブ”に再デザインされ、リアル・タイムに内部住人の住まい方を反映する。 外装のスクリーンは既存のストリートスケープを向上させ、活気に満ちた歩行者環境の醸成を助長する。ブルックス+スカルパは、ファサードを視覚的に小さく分節した可動エレメントで構成することにより、建物のファサードが通行する車や歩行者と共に動いているかのように見せている。これぞヒューズの絵画“パースペクティビティ”の精神だ。 実際そのファサードは、毎日もしくはそれ以上頻繁に描かれる生きたキャンバスと言えそうだ。建物の他の特徴と同様、ファサードは多重的な価値をもち、形態的、機能的、実験的効果に富んだ建築の顔となっている。 建物外壁を覆うアルミ・パンチング・パネルは、昼間は太陽に輝き夜間は内部の光で明るく浮き上がるという、常に変化するスクリーンを生み出した。それは建物に日陰を与えて冷却しつつ、他方外部からの騒音を軽減し、プライバシーを高め、自然換気や自然照明も可能にする優れものだ。 この材料は、東・西・南側に戦略的な意図をもって展開され、外壁の表情に微妙なリズムが加えられている。南面のスクリーンは直射光をフィルターし、予期せぬ視覚的な深度を生み出すと同時に、居住者にセキュリティ感を与えている。 建物のジオメトリックなテクスチュアを高めるために、可動開口部をイレギュラーに配置し、それらがランダムに突出する。そのユニークな建築形態とインテグレートされた機能は、そこに住まう人々やそれが建つ環境的・文化的コンテクストを表現したハイ・パフォーマンス・ロフト集合住宅を創造した。 「チェロキー」は先述したように、ハリウッドにおける雑居ビルでは史上初めてのLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)のプラチナ賞を受賞した作品である。それは数々のエネルギー効率のよいデザインを、ブルックス+スカルパがこと細かに実現した賜物である。 「チェロキー・ミクストユース・ロフト」は、かつてのMGMスタジオで、その後のチェロキー・レコーディング・スタジオの敷地に建ったものだが、その昔これらのスタジオでレコーディングをしたフランク・シナトラ、デヴィッド・ボウイー、デイブ・マシューズらや、それらのスタジオを記念して建設された。 |
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