河岸のミュージアム(ベルギー、アントワープ)
Design : Neutelings Riedijk Architects
設計:ノイトリング・リーダイク・アーキテクツ 古い波止場に立つ赤いランドマーク・タワー |
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ノイトリング・リーダイクと言えば、オランダ建築界にあって、中堅の揺るぎなき存在といったポジションにある。ひとつひとつの丁寧なデザインが、非常にユニークな建築づくりに貢献している。代表作の「ユトレヒト大学ミナエルト・ビル」や「レイクサイド集合住宅」など、ユニークなことこの上ない。前者は外壁にミミズが這ったような、一見不気味な印象で話題になった作品。後者は長く傾斜した屋根面をもち、その端部がキャンティレバーで突出する形態。それは彼らの定番建築だ。 ベルギーのアントワープ中心部に完成した「MAS」は、オランダ語で「Museum aan de Stroom」(英語:Museum by the River)、つまり「河岸のミュージアム」という名前で呼ばれている。敷地は古いドックの中にあり、エイランデと呼ばれるこの辺りは、古い波止場がひしめくエリアで、アントワープではもっとも重要な開発地区だ。 「MAS」は水辺に立ち上がった高さ60mのランドマーク・タワー。ファサードには赤色のインド砂岩が張り巡らされ、4色の濃淡パターンで覆われている。各階は上階に行くに従って、90度ずつ右方向へ回転した構成で、それに合わせた巨大なスパイラル状の階段が生まれた。 内部空間のメインとなるパブリック・ギャラリーには、コルゲート(波形)・ガラスの巨大なカーテンウォールをフィックス。それによる光と影、透明と半透明の戯れが、コルゲート・ガラス・ファサードを、重々しい砂岩の外壁に対する軽やかなカウンターウェイトにしている。 建物のモニュメンタルなタワー・ヴォリュームを柔げるために、メタル・オーナメントがファサードに取り付けられた砂岩の板にリズミカルに鋲のごとく打ち込まれている。手の形をしたオーナメントは、アントワープ市のシンボルなのだ。 建物の足元にあるミュージアム・スクエアは、建物の全体デザインの不可欠な部分だ。この広場はタワーと同じ砂岩でできており、さらにパヴィリオンとテラスに囲まれて、イベントや戸外展示のためのアーバンプラザとなっている。 かつて隆盛を極めたこのエリアは、港湾活動が衰退し、市北部の大きな港に譲った。だが過去10年間、市は再開発に努力してきた。そのため「MAS」の敷地選定は、都市再生の要として非常に重要であった。現在この地区は都市開発に拍車がかかっており、往年の活気を取り戻しつつある。 エイランデは4方を水で囲まれた島であり、今この地にフレミッシュ・バレーや市立アーカイブなどの、種々のパブリック・ファンクションが追加されている。古い倉庫は、どこもかしこもロフトへと改修中だ。 新しいアパートメントがドイツの建築家ハンス・コルホフをはじめ、集合住宅タワーがスイスのディナー&ディナーに、またタワー・ビル群がイギリスのディヴィド・チッパーフィールドやスイスのギゴン&ゴヤーによって進められている。数年後には、5,000人ほどの住人がこの地に流入し、復興が急速に進む予定だ。
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