キャラスコ国際空港新ターミナル(ウルグアイ、モンテヴィデオ)
Design:Rafael Vinoly
設計:ラファエル・ヴィニョリ 大地にインテグレートしたシェル形ターミナル |
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空港を設計できる建築家は、世界でもそうざらにはいない。「スタンステッド空港」や「北京空港」のノーマン・フォスター、「バラハス空港」のリチャード・ロジャース、「関西国際空港」のレンゾ・ピアノ、「スワンナプーム国際空港」のヘルムート・ヤーン、「ビルバオ空港」のサンティヤゴ・カラトラヴァなど、そう多くはない。 しかも話題のザハ・ハディドやヘルツォーク&ド・ムーロン、ジャン・ヌーヴェル、スティーヴン・ホールなどはまだない。そんな状況の中で、「東京国際フォーラム」の設計者であるラファエル・ヴィニョリが、故国ウルグアイの首都モンテヴィデオに、「キャラスコ国際空港新ターミナル」を完成させた。 ヴィニョリは「東京国際フォーラム」以降、それが引き金となってラージ・スケールの作品を次々と物にしてきた。「キャラスコ」もそのひとつ。この新ターミナルは、近隣地区の商業的発展と観光の復興を図るために建設された。 年間100万人の乗降客を見込んだ空港は、モンテヴィデオのダウンタウンよりわずか18㎞しか離れてない。建物のデザインは、オープン・スペースをふんだんに設け、自然光を大量に導入して、パブリック・ゾーンやアメニティを強調したことが特徴だ。 たとえば到着した旅行者は、全面ガラス張りの中2階レベルを通過するが、これによって到着客をターミナル空間へと導き、その後入国審査、荷物引き取り、税関へと下っていくようオリエンテーションされている。ランドスケープされたパブリック・テラスとレストランが3階レベルを占有し、滑走路やメイン・コンコースへの広々とした眺めを提供している。 ヴィニョリはパブリック・ゾーンを、2階のアクセス道路側の出発ホール&テラスと、滑走路側コンコースの上部(3階)に配置し、すべてを長さ336m幅131mもある巨大なシェル形屋根の下に納めた。緩やかなカーブを描く高さ36.7mの低いモノリシックな屋根は、建物全体を敷地に密接にインテグレートさせている。 外観の流動的なラインと曲面のジオメトリーが、ウルグアイにある自然のランドスケープに酷似しており、建築的イコンとしてのみならず、シンボリックなストラクチュアとしているのは素晴らしい。 建物内部では、1階が到着ロビーで2階が出発ロビーと垂直的に分離され、乗降客も1階は乗車だけで2階は下車だけと動線も明快だ。1階道路側にあるオープン・アトリウムは、上部の大空間に向けて開いており、視覚的・空間的に旅のスタートとエンディングに相応しいモニュメンタリティを表現している。 出発ロビー階は、パブリック・コンコースとパッセンジャー・コンコースを擁しており、両者は中央にあるセキュリティ・チェックと出入国管理で仕切られている。ここを過ぎると、デューティ・フリー・ショップとレストランのある待合空間。 ウルグアイでは、今でも友達を空港に迎えに行ったり、送りに行ったりするという。そんな親しさが生きている国にとって、「キャラスコ国際空港新ターミナル」は、ドラマティックかつウェルカムな出会いと別れの場所となっている。 |
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