新アクロポリス美術館(ギリシャ, アテネ)
Design:Bernard Tschumi
設計:バーナード・チュミ パルテノン神殿と対話する美術館 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
世界の建築界における、近年の国際コンペの大きな成果のひとつが、バーナード・チュミ設計による「新アクロポリス美術館」だ。周知のように、チュミはパリの「ラ・ヴィレット公園」コンペに勝ち、ニューヨークに渡り、コロンビア大学で教鞭を執りつつ設計を続けてきたが、作品の数は限られていた。しかし近年、往年の彼らしいコンペに強いバーナード・チュミが復活してきたようだ。 「新アクロポリス美術館」は、人類のもっとも尊い建築遺跡のひとつであるアテネの「パルテノン神殿」の遺物を展示する重要な美術館。しかも敷地は「パルテノン」の南東300mにあり、そこからは古代アテネの都市遺跡が4,000㎡以上に渡って出土したという、遺跡の中の敷地という重要かつ貴重な場所だ。 広さ21,000㎡の建物は、古代ギリシャのもっともドラマティックな彫刻群を収容するストラクチュアだ。また圧倒的に歴史的でモニュメンタルなセッティングに配置されるという至難のデザインでもある。 天下無比のコレクションを展示するということから、チュミはあえてモニュメンタルでない形態を選択。そのシンプルかつ正確なデザインは、古代ギリシャ建築がもつ数学的・概念的明快性に一致する。 実際に「新アクロポリス美術館」建設委員会の代表であるディミトリオス・パンデルマリス教授は、「シンプルで、明快で、美的な解決案が、現在や将来においても適切な美術館的・建築的体験を可能ならしめる展示物の、古典的な美と簡潔性に符合している」と、チュミの案を評している。 希代の世界遺産に対峙する「新アクロポリス美術館」は3階建てで、既存の美術館の10倍のスケール。事前の考古学的調査で発掘された敷地の遺跡は保存され、ミュージアムのデザインに組み込まれた。それは来館者にとって、重要な生の遺跡体験となっている。 この1階レベルにはメイン・ロビーや企画展示室があり、また地下の遺跡を見せるために床に開けられた開口部がある。さらに床そのものがガラスでできており、そのまま遺跡を見学できるようになっている。 ダブル・ハイトの2階レベルへは、ガラスのスロープが上昇し、古代からローマ時代までのコレクションを展示する常設展示空間へと通じている。ここの中2階にはケータリング・スペースやパブリック・テラスがある。 ここには中心部に矩形のコンクリート・コアがあり、壁面には「パルテノン」のフリーズ(帯状装飾)が、元の「パルテノン」についていたと同じ方位・配置で展示されている。来館者はガラス越しにアテネ市内のパノラマや、2500年という悠久の時間を超越した「パルテノン神殿」との対話を楽しむことができる。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
|