The 8 House Housing(Copenhagen, Denmark)
8ハウス・ハウジング(デンマーク、コペンハーゲン)
Design:Bjarke Ingels(BIG)
設計:ビヤルケ・インゲルス(BIG)
8字形プランの集合住宅

デンマークの建築集団BIGは偶然「ビッグ」と読めるが、実はBjark Ingels Groupという社名の頭字語。ビヤルケ・インゲルスは若干37歳ながら、数々の集合住宅の話題作を発表してきた今売れっ子の建築家。BIGの作品は、従来の集合住宅の概念を拡大しつつ覆すような斬新な作風だ。ここに紹介する「8ハウス集合住宅」も同断である。

建物はコペンハーゲン運河沿いのオレスタッド南部にあり、文字通り「8」の字形を描くユニークなプランをもっている。この巨大な集合住宅には、すべてのライフ・ステージにある家族の住居をはじめ、老若、核家族、独身、増殖する家族、減少する家族などあらゆるタイプの家族形態に適応する住居を含んでいる。

プランが8を描くことから、ふたつの中庭が生まれた。8の字の交差部分には、500㎡のコミュニティ施設を設け、さらにそこには9m幅の通路が貫通し、西側の公園サイドと東側の運河サイドを連結している。

延床面積60,000㎡に及ぶ建物は3つの住居タイプをもっている。種々のサイズをもつアパーメントハウス、ペントハウス、それにタウンハウスだ。ここでは郊外の安穏とした生活と、大都市のエネルギーが共存ずる素晴しさを楽しむことができる。

たとえば独身者やカップルにとっては、機能性に溢れたここでの生活はこの上なく便利だろうし、生活を100%エンジョイしたい家族にとっては、コペンハーゲン南部の景色や運河へのパノラマ、さらには屋上から見る星降る夜景の素晴しさは格別だ。

「8ハウス・ハウジング」は居住環境だけでなく、ビジネス施設も折り込まれている。だが互いに異なる双方の機能を分割し、異なるブロックに納めるのではなく、水平的に拡散させ展開させている。

建物は上階に住居部分が配置されており、ベース部分には商業エリアが組み込まれている。その結果、異なる水平的な層が、それぞれ独自の個性あるクオリティを発展させている。住居部分は景色、太陽、フレッシュ・エアを満喫し、他方オフィス群は活気あるストリート・ライフに密着できるのだ。このシステムは8の字形の家形によって強調されている。建物は北東側に位置する8の字の頭部に向けて上昇。逆に南西側では8の字の底部に向けて下降し、地上面には狭いゲートがあり外部に連結されている。

476戸の住居を擁する建物のぺリメーター部分には、ストリート・レベルから屋上まで、パブリックな通路が延びている。屋上を構成するスロープ状のグリーン・ルーフは1,700㎡もあり、戦略的にアーバン・ヒート・アイランド現象を抑えると同時に、建物にヴィジュアル・アイデンティティを与え、南方向の近隣にある農場への近似性を表現している。

BIGはこのオレスタッド地区に、革新的な集合住宅プロジェクトを3棟も完成させた。鋭角3角形のシャープなテラスがキャンティレバーで突出する「VHハウス」。外壁を木張りとした「マウンテン集合住宅」。そしてこの「8ハウス」だ。そしてついに最近、ニューヨークのピラミッド形の集合住宅コンペを制したBIGは、デンマーク建築の地平を切り拓く新進気鋭の若手建築家集団である。

 
図面
 
建築家
   


©Ulrik Jantzen

■ビヤルケ・インゲルス略歴

1974年 デンマーク、コペンハーゲン生まれ
バルセロナ大学とデンマーク王立芸術アカデミーで建築を学ぶ
2001年 PIOL建築事務所を協働で設立。OMAに協力
2002年 デンマーク王立芸術アカデミー客員教授
2004年 ヴェネツィア・ヴィエンナーレ金獅子賞
2005年 BIG(Bjarke Ingles Group)を設立
2005年 ライス大学(ヒューストン)客員教授
2007年 ハーヴァード大学GSD客員教授


■代表作

主な代表作に、コペンハーゲン・ハーバー・バス、海洋ユース・センター、VH集合住宅、ヘルシンガー精神医学病院、シヤケット・ユース・センター、マウンテン集合住宅、スーパーキレン・マスタープラン、8ハウス・ハウジング、デンマーク海洋博物館、エクスポ2010デンマーク・パビリオン、タマヨ文化センター、アスタナ国立図書館など多数。

 
Materials : Courtesy of Bjarke Ingles Group