ホテル・ルネッサンス(フランス、パリ)
Design : Christian de Portzamparc
設計:クリスチャン・ド・ポルザンパルク 波打つファサードをもつパリのアーバン・オアシス |
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フランスの建築家、クリスチャン・ド・ポルザンパルクと言えば、パリの「音楽都市」や「ユーロ・ディズニー」(プロジェクト)など、エレガントな曲線をもつ建築デザインで知られている。その彼が、「ホテル・ルネッサンス」という無数の曲面ガラスがうねるファサードをデザインして話題になっている。 パリの凱旋門が立つエトワール広場。ここからシャンゼリゼを直角に曲って北方向へ走る街路がワグナム通りで、広場から200mほど行った、かつての「エンパイア・シアター」があった所が敷地である。 元々この大通りはエトワール広場から四方八方に延びた街路の1本で、その真っ直ぐな街並は典型的なオスマン的都市構成のストリートである。そこに波打つ曲面ファサードのホテルが出現したのだから、話題にならないのが不思議なくらいだ。 「ホテル・ルネッサンス」は、ちょうど凱旋門の側面に突き当たる通りに面し、1階に3つのブティックを擁する比較的にパリらしい小さなホテルだ。9階建て118室のホテルは、通り側各階には7室が配置されているにすぎない。 オスマン男爵の都市計画によるワグナム通りは、全くの直線的、硬質的な街路。各建物のファサードは、フラットでスムースな表情で立ち並び、知覚し得る目立ったランドマークのようなものは何もない。そこに躍動感溢れるファサードによって、フラットな都市景観に刺激を与えているのが「ホテル・ルネッサンス」だ。
客室の湾曲する開口部は、幅(間口)3.6m、カーブの長さは4.1mもあり、高さは2.51m。ガラスはダブル・スキンで、中間に空気を通して換気・断熱を図る。さらにサンド・ブラストによるホワイト・ラインのグラデーションをほどこして、下から上へ透明度を増している。この窓からは表側では凱旋門を眺望できるし、背後ではテルン広場を見晴らすことができるという素晴らしさ。 これらのベイ・ウィンドウは都市にさざ波現象を引き起こしており、それはエンジニアリングの勝利ともいうべき、湾曲した大きなモノブロックのガラス・シート群が成し得た成果だ。ポルザンパルクはこのアイディアを、向かいにあるラヴィロット設計の「ホテル・セラミック」のうねるタイポロジーを引用することで生み出した。 結果的にこの“アンデュレーション(うねり)”は、ワグナム通りの街並の単調さを打破し、宿泊客にヴィジュアルな楽しみを与えている。さらにサンド・ブラストによるガラス面の白濁が、内部のプライバシーを守ると同時に、外部への視野を広くとっている。 テルン広場と呼ばれるこのアクセス用の階段通路には樹木が植え込まれ、ホテルから見晴らすと公園のような佇まい。L字形プランをもつホテルでは、ワグナム通り側に面していない客室は、フラットな開口部群がテルン広場に沿って長く配置されている。 表側は波打つ曲面ガラス、中庭側は雁行するフラット・ガラスと、表情豊かなファサードをもつ「ホテル・ルネッサンス」は、パリ都心の懐深く、長い躯体を静かに横たえて、パリジャン好みの閑静なアーバン・オアシスとなっている。 |
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