ウェルネス・オルヒデリア(スロヴェニア、ポッドセトルテック)
Design : Enota
設計:エノタ ランドスケープ・デザインによる温泉桃源郷 |
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エノタ(Enota)はスロヴェニアの首都リューブリヤナをベースに活躍する建築家集団。1998年に結成され、現在はディーン・ラー、ミラン・トマックによって主宰されている。彼らを一躍有名にしたのは、「ホテル・ソテリア」であった。「ウェルネス・オリヒデリア」は、スロヴェニアのポドチェトレディックにある「テルメ・オリミア温泉コンプレックス」の一部を形成している。
70年代に創設されたこの施設は、温泉の開発をした当初は、ケガなどの治療を目的としたヘルス・センターとして設計された。しかも治療費は、国立の健康保険会社によってまかなわれていた。社会主義政府の崩壊とともに、状況は急変した。施設のオーナーたちは、美しい周辺環境を利用し、より健康志向のプログラムで客を取り込むことで、新しい状況に対応せざるを得なくなった。 「ウェルネス・オルヒデリア」は、エノタがここ数年間に手掛けてきた一連のプロジェクトの第3期に相当する作品である。第1期はオリジナルな「プール・コンプレックス・テルマリジャ」の増築であり、2期は要求の厳しいゲストを引き付けるためデザインされた「ホテル・ソテリア」だ。 そこでエノタが考案した新しい「ウェルネス」では、建築というより連続するデザインによって、ランドスケープ的な造形表現となっている。中央を走る歩道が延びて、地中に埋設された建築の屋根を伝って行くビジターは、敷地に関するまったく新しい異なった体験をすることができる。アクセスは南東側コーナー部から、巧みなランドスケープ・デザインが施されたステップ状のアプローチを上がっていく。 幅の広いこのアプローチは、階段とスロープで構成されているが、エノタ・デザインの最初の見せ場だ。所々に配置された照明ポールや木製ベンチなど、洗練されたデザインだ。アプローチから1歩中庭へ入ると、静かなランドスケープから、華やかなスパ施設群の中心部に到達する。木製フロアでスキップする円形の温泉プールの周辺の床には、日光浴用のデッキ・チェアやパラソルが多数配され、リゾート雰囲気が横溢。 ここは施設の地下レベルにつくられたアウトドアのオープン・スペースで、周囲はガラス張りのインドア温泉施設に囲まれているため、外界から全く遮断された桃源郷。建物越しに見えるのは、わずかに遠くの山々だけだ。 山の斜面を模したような傾斜ガラス面の内部にも、温泉プールや大きなプールもある。天井を支持する柱が、樹木の枝のメタファーになっているのは面白い。その他内部には、休息コーナーやリラクゼーション・コーナーなどがある。 エノタのデザインによる新しい作品は、自分たちの表現を追求したり、空間の主張を軸にしたりすることよりも、既存のシングル葺きの建物とその他の空間エレメントをシンプルに接続させることに主眼が置かれた作品である。 |
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