41 Cooper Square(New York,USA / 2009)
クーパー・スクエア41(アメリカ、ニューヨーク)
Design : Thom Mayne(Morphosis)
設計:トム・メイン(モーフォシス)
ヴァーティカル・ピアッツァが醸すクロスディシプリナリー空間

150年の伝統を誇るクーパー・ユニオンは、われわれ建築好きの間では、名教授ジョン・ヘイダックの名前で知られている。今は亡きヘイダックが、インテリアの改装を行ったのが1975年。そして今回、モーフォシスの手によって、3ヶ所に分校されていたアート、建築、エンジニアリングの各学部を、1棟に集めて完成したのが、「クーパー・スクエア41」である。

3つの学部をひとつの建物に集約するのは、学部相互間のクロスディシプナリー(学際的)な対話やコラボレーションを育むためだ。そのためにトム・メインが考案したのが、“ヴァーティカル・ピアッツァ”である。

新しく完成したアカデミック・ビルの内部を、アトリウムに沿って縦に貫く幅6mもある階段は、主動線だが学生同士の出会いの場所でもある。ここでは形式ばらない、社会的、知的、創造的な交流が意図されている。即興のミーティング、予定された会議、学生の集会、レクチュア、知的なディベートなどが開催される。

建物の1階には、トップライトで明るい全階を貫く中央アトリウムがある。2層分吹抜けのエントランス・ロビーから、“ヴァーティカル・ピアッツァ”が4階分上昇してガラス張りのステューデント・ラウンジに至る。ここからは近隣の街並を見晴らすことができる。

さらに5階から9階へは、中央アトリウムの周囲にスカイ・ロビーをはじめ、学生ラウンジ、セミナールーム、ロッカー、シート・エリアなどが配置されて、さらに高い位置からニューヨークのシティスケープを満喫することができる。また、スカイ・ブリッジがアトリウム空間の空中を飛んで、これらの空間群を相互に結び付けている。このようなダイナミックな内部景観の演出が、建築デザイン的な見せ場であることを、トム・メインは百も承知だ。

さて開かれたアカデミック・ビルを標榜する「クーパー・スクエア41」は、1階をガラス張りとしてヴィジュアルな透明感を強調。一般大衆の自由なアクセスをしやすくしている。近隣住民を内部の活動に参加させるべく、地階には展示ギャラリー、会議室、200席のオーディトリアムなど、パブリックな機能を充実させている。

亀裂が入った彫刻的な3番街側のファザードは、今や「クーパー・スクエア41」のヴィジュアル・アイデンティティーそのものだ。クーパー・ユニオンは、“水や空気のように自由な教育”を目指した創設者、ピーター・クーパーの言葉通りの建築を今つくり得たといえる。


 
図面
 
建築家
   

©Reiner Zettl

■トム・メイン(モーフォシス)略歴

1944年 カリフォルニア生まれ
1968年 南カリフォルニア大学建築学科卒業
1972年 南カリフォルニア建築大学創設メンバー
1974年 マイケル・ロトンディと共にモーフォシスを設立
1978年 ハーヴァード大学大学院建築学科修了
1987年 ローマ賞
1991年 マイケル・ロトンディが独立
1992年 アーノルド W.ブルンナー賞
1993年 UCLA終身教授
2000年 AIAロサンゼルス・ゴールドメダル
2001年 クライスラー・デザイン優秀賞
2004年 アメリカ建築家協会名誉会員
2005年 プリツカー賞
2006年 AIAロサンゼルス10年賞
2007年 GSAグリーン戦略環境賞
2007年 AIAロサンゼルス25年賞


■代表作

主な作品に、ケイト・マンテリーニ・レストラン、スィーダーズ・サイナイ癌センター、クロフォード邸、サリック・ヘルスケア本社1&2 、ロングビーチ国際小学校 、ダイヤモンド・ランチ高等学校、トロント大学大学院学生宿舎、ハイポ・アルプ・アドリア・センター、Dr.テオドール・アレキサンダー化学センター・スクール、カルトランス第7地区本社、シンシナティ大学学生レクリエーション・センター、NOAA サテライト・オペレーション施設、ハイポ・アルプ・アドリア銀行、ウェイン・ライマン・モース裁判所、サンフランシスコ・フェデラル・ビル、カリフォルニア工科大学天文学天文物理カーヒル・センターなど多数。