リンクト・ハイブリッド(中国、北京)
Design : Steven Holl
設計:スティーヴン・ホール ウルトラ・モダンな連結高層集合住宅 |
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日本でも福岡や幕張で集合住宅の経験があるスティーヴン・ホールは、それらをさらに進化させた巨大集合住宅プロジェクトによって中国でのデビューを飾った。 「リンクト・ハイブリッド」は広さが21万㎡もあり、622戸に2,500人の住民を収容する大規模居住区。池を中心に、それを取り囲むよう、建物はサークル状に配されている。 建物はタワー形式で8棟立っている。従来の集合住宅であれば、これらが独立した形で建っているのだが、ここでは8棟が20階レベルですべて連結されているのだ。“スカイ・ループ”と呼ばれるこの空中ブリッジこそ、「リンクト・ハイブリッド」命名の由来である。 「リンクト(linked)=連結された」と、「ハイブリッド(Hybrid)=合成物」の意味である。連結された8つのタワーをつなぐ空中ブリッジには、カフェをはじめ、日常生活に必要な機能を提供するショップが多数配置されている。つまり集合住宅と多機能の合成物=ハイブリッドというわけなのである。 「リンクト・ハイブリッド」のテーマは、“都市の中の都市”だ。完結したひとつのアーバン・スペースの創出を主目的としたこの空間は、また2,500人の住人たちの日常生活を支える活動とプログラムを必要としている。 具体的にはカフェ、デリカテッセン、ランドリー、花屋、レストラン、バー、アート・ギャラリー、展示スペース、読書室、デザイン・ストア、本屋、コーヒー・ショップ、ゲーム・コーナー、ヘアー/ネイル・サロン、スパ&マッサージ、健康食ストア、男女ロッカー・ルーム、水泳プール、織物室、トレーニング・ルーム、フィットネス・クラブ、ジュース・バー、リスニング・ラウンジ、展望デッキなど、何でもござれだ。 さて数々の空間を貫通するこの空中回廊の体験は、8つのタワーがそれぞれ動きとタイミングとシークエンスを考慮して配されているので、多様な効果を発揮する。コルビュジエの“建築散歩”に匹敵する移動体験は、わずかに上昇していくスロープによって、視点の変化が楽しめる。恐らくコルビュジエも、こんなに長く変化に富んだ多機能なスロープを経験したら、さぞや驚くことであろう。 さらに池の噴水が放つ霧にカラー・ライトが照射されて、カラフルな雲が浮遊するといった芸当を披露している。池の中に立つフローティング・シネプレックス(映画館)の下側外壁には、現在上映中の映画の一部が投映される。さらにその映像は池の水面にも映し出されるといった具合に、夜間は建物全体に渡って映像ショーが展開される。 中国の集合住宅は、歴史的にみて画一化・同一反復といった特徴がある。ホールのデザインはそのパターンを打破し、アーバン・リビングにおける個別化を意図したものといえる。だからこそ、622戸の住戸に数百タイプの住居プランを可能にしたバラエティをもっているのだ。 中国のデヴェロッパー“モダン・グループ”に要望された21世紀のエコロジカル・アーバン集合住宅は、スティーヴン・ホールの手によって、ウルトラ・モダンな造形表現として万里の長城近くに完成した。 |
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