ベイルート・アメリカン大学サリマンS. オライアン・スクール・オブ・ビジネス棟(レバノン, ベイルート)
Design : Machado & Silvetti
設計:マチャド&シルヴェッティ マシュラビアが織り成すヴァナキュラーな陰影 |
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レバノンの首都ベイルートにあるアメリカン大学は、今世界的な建築家として知られるザハ・ハディドが学んだ大学だ。彼女は卒業後、ロンドンのAAスクールで建築を習得。そんなエピソードがある大学のスクール・オブ・ビジネス棟を、アメリカのマチャド&シルヴェッティが設計した。 地中海に面するベイルートのコーニッシュ通り。この賑わう大通りの先にベイルート・アメリカン大学はある。海岸通りに面したキャンパスの入口近くに位置する「サリマンS.オライアン・スクール・オブ・ビジネス棟」は、地中海への眺望を尊重したデザイン。直角に曲がったプラン形も海へのヴィスタを考慮した形態だ。1階は個々のガラス・パビリオンの集合としてのデザインで、学生が建物内を通過する時などはヴィジュアルな透過性で海へのパノラマが楽しめる。 建物全体のプログラムは、ロジカルなヒエラルキーで構成されている。つまり1階はパブリック・ゾーンとして、管理部門のオフィスをはじめ、カフェ、図書館、オーディトリウムを配置。上階は2階に学部教室群、3階に大学院、4階にエグゼキュティブ(経営者)教育部門となっている。ファサードは今流行のガラス張りハイテク仕様のツルピカ・ビルではない。ローカルなフォルニ・ライムストーンのブロックを積み、エジプト古来の“マシュラビア”(格子模様)を想起させるパターンを生み出している。 夏の暑いベイルートでは、フォルニ・ライムストーンのブロック壁面が、夏の涼風を取り込み冬の暖気を保存する。また平面の直角部分に設けられた3角形の中央アトリウムが、上下のレベルを空間的につないでいる。“クーリング・ラング(冷却する肺)”と呼ばれるこのアトリウムは、海からの涼風を廊下に配されたダクトで教室やオフィスへ送り込む自然換気を行っている。 マチャド&シルヴェッティは、現在ボストンをベースに活躍するベテラン建築家デュオ。共にブエノスアイレス生まれで、共にブエノスアイレス大学を卒業した仲良しコンビ。ふたりは建築スキンの表情デザインにひとかたならぬ腕前を発揮する。 「ベイルート・アメリカン大学サリマンS.オライアン・スクール・オブ・ビジネス棟」は、ヴァナキュラーなマテリアルやデザイン手法により、地中海性気候の特徴を巧みに取り込んだサステイナブル・デザイン。落ち着いた大人のデザインと言えそうだ。
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