La Llotja Theatre & Conference Center(Lerida, Spain / 2010)
ラロンハ劇場&会議センター(スペイン, レリダ)
Design : mecanoo
設計:メカノー
大地から生え出たフルーツ・トゥリー建築

常に大胆な造形と材料のバラエティに富んだ選択で、建築デザインの地平を切り開いてきたオランダの建築家集団メカノーが、またまた斬新な建築を披露してくれた。

バルセロナにつぐスペイン、カタルーニア地方第2の都市レリダ。敷地は市内を貫流するセグレ川が、街中を少しはずれたあたりの土手にある。敷地のすぐ南側から南東側にかけて川が流れており、メカノーのデザインはまさに風光明媚なこの辺りのランドスケープを解釈したものである。

3層の建物は、このエリアの広々とした大きな都市的スケールの観点から見ると、川と山の間に位置することから、両者のリンク役を果たしている。メカノーは特に建物と川の間に、バランスのとれたコンポジションを形成しているのだ。建物の外壁の特徴である長く突き出した庇(上階のスラブ)は、来館者を強い日差しや冷たい雨から守っている。

スペインの大地から生え出たような巨大な石造建築は、上階に向かって平がりのある水平的な形態となり、屋上に大きなルーフ・ガーデンを生み出した。他方キャンティレバーで突出した深い軒により、その下にイベント広場が形成された。建物南西側に建設された別棟の北東側外壁が段状の屋外観覧席となり、イベント時の客席として使用する。

建物の構成は、まず駐車場が南西側広場の地下スペースに2層に渡って設けられ、搬入・積荷用のカー・アクセスは北東側の1階レベルに配されている。この1階レベルには、メインとなるシアターのステージがあり、車で到着した大道具などがそのままバック・ステージに運びやすくなっている。また楽屋やレストランも同じ階に配されている。

建物平面上のほぼ中心部に、吹抜けたライト・コート(光庭)がある。トップライトから降り注ぐ光の中をモニュメンタルな階段がストリート・レベルから2階のシアター・ホールへと続く。また空中スロープがこの空間の中を飛んで、3階のホワイエに通じている。ここからはレリダ市街の都市景観やセグレ川へのパノラミックなヴィスタをエンジョイできる。

またこの広くカラフルなホワイエには、シアター・ホール(会議ホールにも兼用できる)への入口をはじめ、小会議室やミーティング・ルームなどがある。またプレス・オフィスやVIPルームなどは都市側に配され、内部階段によりアクセスできる。

レリダは果実の生産で有名であり、広さ37,500㎡の建物の随所に果物をテーマにしたデザインが施されている。シアター・ホールの壁面には“光の木”がデザインされ、さながら果樹園の雰囲気を出している。また3階ホワイエのカラフルな壁面には果物の色をモチーフにしている。さらに屋上には樹木の茂る庭園ができ、大地から生え出したフォルムの建物は、“フルーツ・トゥリー”建築と言えそうだ。


 
図面
 
建築家
   

■フランシーヌ・ハウベン(メカノー)略歴

1955年 オランダ生まれ
1984年 デルフト工科大学卒業。この年同大学の卒業生5人が集合住宅コンペに勝利したことを機にロッテルダムにメカノーを設立。現在はフランシーヌ・ハウベン女史が主宰
1999年 デルフト工科大学教授に就任
2000-01年 イタリアのスヴィッツェラ大学の建築&動態美学教授。スイス建築アデミー教授
2001年 RIBA名誉会員
2002年 第1回ロッテルダム国際建築ビエンナーレ2003のディレクター
2002-06年 アルメレ市建築家
2003-05年 ロンドン国際デザイン・コミッティー・メンバー
2007年 アメリカ建築家協会名誉会員、王立カナダ建築家協会名誉会員
2007年- ハーヴァード大学客員教授
2008年 ヴーヴクリコ・ビジネス・ウーマン賞受賞


■代表作

主な作品に、ヘルデンキングスプレイン集合住宅、デルフト工科大学図書館、ユトレヒト大学経営・経済学部棟、セントローレンス墓地チャペル、国立遺産博物館、カナダプレイン文化センター、モンテヴィデオ、デジタル・ポート・ロッテルダム、ニュー・エルブレッゲ、オフィサーズ・ホテル・デ・シタデル、ダ・ヴィンチ・カレッジ、ラロンハ劇場&会議センターなど多数。

 

Materials : Courtesy of mecanoo