サンジャコモ教区コンプレックス(イタリア, ペルージャ)
Design : Massimiliano Fuksas Architetto
設計:マッシミリアーノ・フクサス・アルキテット 光に形態を与えるキャノン・リュミエール |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
イタリアのペルージャに完成したマッシミリアーノ・フクサスの「サンジャコモ教区コンプレックス」は、早い話が教会であり、その付属施設との2棟からなっている。敷地はペルージャのフォリーニョにある2,000㎡のフラットランド。近くにはフォリーニョ市のニュータウン構想で実現された北環状道路があり、近年開発された新興地区だ。 コンペに勝利したフクサス案は、教会機能をふたつに分け、メインとなる礼拝堂とそれ以外のレセプション・センター、聖具室、カノン(教典)・ハウスなどの機能を別棟として計画したものである。前者は30m×22.5m×25m(高さ)、後者は60m×12m×7m(高さ)とし、いずれも長方形プランのシンプルなボックスである。 フクサスと言えば周知のように、ローマからパリに進出して大躍進を遂げた建築家で、その造形力は大胆かつダイナミックな作品を生み出してきたことで知られている。ところがここ「サンジャコモ」では、シンプルな直方体がふたつ並列しているという至って平凡な佇まい。これはラジカルなデザインをもって鳴るフクサスとしてはどうしたことか。 だが礼拝堂に1歩入ると、そこには驚愕のシーンが待ち受けている。RC打放しのボックス空間の中に、なんとひと回り小さなコンクリート・ボックスが空中に浮遊しているではないか。ボックスの下部を取り去って、それを宙吊りにした感じだ。 側廊を見上げると、上部にダニエル・リベスキンドの「ユダヤ博物館」の階段室にあるような傾斜した梁が数本斜めに飛んでいる。一見宙吊りボックスを支持する構造ビームと見えるのだが、それだけではない。このビーム群は中が空洞のシャフトになっており、外壁の不整形な開口部からここを通して身廊の宙吊り壁に光のフォルムを照射する。 コルビュジエが「ラ・トゥーレット修道院」で用いた“キャノン・リュミエール(光の大砲)”が、フクサスによって再現されている。しかも「ラ・トゥーレット」では“キャノン”を通過した光は着色されて拡散し祭壇を照らすが、ここではシャフトを抜けた光は形を付与されたフォルムとして内壁に投影される。 宙吊りの身廊はいわば“フライング・ネーヴ”(飛ぶ身廊)だし、美しい光の断片を内壁に照射するシャフトはキャノン・リュミエール。共にフクサスがこの礼拝堂に配備した強いヴィジュアル・インパクトにしばし酔えるのである。 |
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|