Fondazione Banca dell’Occhio (Venice-Mestre, Italy / 2008)
バンカ・デル・オキオ財団(イタリア, ヴェニス・メストレ)
Design : Emilio Ambasz
設計:エミリオ・アンバース
エコ・フレンドリー・グリーン・アーキテクチュア

エミリオ・アンバースといえば、「アクロス福岡」など、日本でもいくつかの作品を残した後、しばらく音沙汰がなかった。彼の作風はかなり以前からエコ・フレンドリーな緑をあしらったものが多く、その大胆なアイディアが当時の時代の流れにそぐわず、先端すぎたきらいがある。だが今となっては、サステイナブルな時代感覚にピッタリ合った感じがする。そのラインに沿った作品が、「バンカ・デル・オキオ財団」である。

イタリアのヴェネト州、ヴェニス・メストレにある敷地はフラットな2.8ヘクタールの土地であり、近くを走る道路からよく見える位置にある。ここはやはりエミリオ・アンバースが設計した地域病院の入口近くにある。3角形の建物は、平行四辺形の高さ12mの壁面2枚が直角に向き合う形で配置され、それらの先端上部が互いに近接し、その下に3角形の象徴的なゲートを形成している。緑青をふいた2枚の銅板製の大きな壁面が、建物の外に対する顔となっている。

建物正面から見ると、2枚の壁による2等辺3角形のシンボリックなゲート空間ができており、その奥に草が茂った丘のようなものが見える。しかし、これは丘ではなく建物のファサードだ。アンバースは「アクロス福岡」と同じように、ここでも建物のファサードを段状にセットバックさせて植栽を施し、まったく緑に覆われたグリーン・ファサードをデザインした。

さて建物の背後はと言うと、アンバースはやはり緑に固執している。東側ファサードの2階、3階、屋上には建物の間口いっぱいの長いバルコニーを設け、たっぷりの緑を植栽し、そのグリーンが植込みから溢れてバルコニーの外壁に垂れ下がっている。

さらにこの建物東側には、外部に円形の中庭が掘り込まれ、やはり植栽が十分施され、地下レベルで建物と直結している。また緑の芝生が敷き詰められた広い裏庭からも、外部階段をくだって中庭にアクセス可能となっている。

どこを向いても緑が目に入ってくる「バンカ・デル・オキオ財団」は、日本語で言えば「眼球財団」となる。眼球移植やその研究をはじめ、外科手術施設、幹細胞研究所、アイ・トリートメント・センター、オフィスを内包し、さらにEIDON財団の教育施設では450席のオーディトリアムが正面入口側の地下レベルに配置されている。

以上の知識をもってプランを見るとアンバースは面白い。両底角45度の2等辺3角形を挟んで、東西軸上にふたつの円形がある。エントランス前のロータリーと裏庭に掘り込まれた中庭である。もちろんアンバースは、ふたつの眼のメタファーとしてプランに盛り込んだ。

眼科治療の先端技術を収容した医療施設が、見事なまでに緑に覆われた丘のような建物として完成したのは、エミリオ・アンバースの執拗なまでのグリーン・アーキテクチュアへの強い希求であった。







 
図面
 
建築家
   

■エミリオ・アンバース略歴

1943年 アルゼンチン、チャコ生まれ。
1966年 プリンストン大学で建築修士号取得
1967-69年 プリンストン大学建築学科教授
1969-76年 MoMAのデザイン部門のキュレーターを務める
1969年 ピーター・アイゼンマンと建築&都市研究所設立
1981-85年 アーキテクチュア・リーグの代表を2期務める
1981年 エミリオ・アンバース&アソシエイツ設立
1990年 クォタナリオ賞
1997年 ヴィトルヴィウス賞
2000年 2000サフレックス・デザイン賞、AIA&ビジネス・ウィーク建築賞
2001年 JIA環境建築賞1等
2007年 AIA名誉会員


■代表作

主な作品に、モンタナの家&アート・ミュージアム、アクロス福岡、マイカル文化&スポーツ・センター、湖岸の家テラス&ロビー・デザイン、サンアントニオ植物園、カサ・デ・レティロ・エスピリチュアル、バンカ・デル・オッキオ、オスペダーレ・デル・アンジェロなど多数。

 

Materials : Courtesy of Emilio Ambasz & Associates