Zenith Concert Hall in Strasbourg (Strasbourg, France / 2008)
ストラスブール・ゼニス・コンサートホール(フランス, ストラスブール)
Design : Massimiliano Fuksas Architetto
設計:マッシミリアーノ・フクサス・アルキテット
田園に舞い降りたオレンジ色のUFO

フランスでよく聞く「ゼニス・コンサートホール」は、ポップ・ミュージックを中心としたホールだが、多ジャンルの演奏や、スポーツ・イベントもやるらしい。1984年にパリのラ・ヴィレット公園内に、フィリップ・シェ&ジャン・ポール・モレルの設計で完成したものが最初で、現在まで16個が完成している。

マッシミリアーノ・フクサスとドリアナ・フクサスは、今回「ストラスブール・ゼニス・コンサートホール」を完成させたが、アミアンにも「ゼニス」を進行中である。ストラスブールもアミアンも、有名な大聖堂のある都市として知られている。近代的な「ゼニス・コンサートホール」と古いゴシック・タワーの対比は、偶然とはいえ面白い。

敷地はフランス北東部の都市、ストラスブールの郊外にある展示パーク用に開発されている64エーカーの土地である。広大な田園風景の中、巨大な楕円形のオレンジ色のUFOが舞い降りた印象だ。

「ゼニス」というと、ラ・ヴィレット公園のそれも同じだったがテント構造が多い。10,000人を収容するこのストラスブールの「ゼニス」も、グラスファイバーの両面をシリコン・コーティングした耐火メンブレインを使用したテント構造だ。建物の全周を、派手なオレンジ色のグラスファイバーで包まれた「ゼニス」は、目立つこと甚だしい。

フクサスはまず、現場打コンクリートで10,000人収容の楕円形のコンサートホールをデザイン。その周囲に、さらにそれより大きな5つの楕円形スティール・リングを層状に配置し、それをグラスファイバーのスキンで覆ったのだ。

フクサスが巧みなのは、それら5つの楕円形リングを北側へずらし、コンクリート製のコンサートホールとの間に大きなスペースを取り、そこをロビーとしたことだ。加えて下から上へ、リングを北東方向へ少しずつずらしたのだ。これによりテント構造の軒が生まれた。

5つのリングを支持するのは、コンサートホールの外周にそって配された傾斜したスティール・コラム群から延びたブレースである。しかし南側ではコンクリート壁とテント構造が近接しているので、コラムを省いていきなりブレースでコンクリート壁とリングを連結させている。

天井構造は客席ほぼ中央上部のセントラル・ハブから、22本の長いトラスがリングまで延びて、その下にキャットウォークがサスペンションされている無柱空間。その自転車のスポークのようなダイナミックな放射状のスティールの森は圧巻だ。

客席もメンブレインと同じオレンジ色で、背後のコンクリート壁には音響を配慮して、ウールのライニングが張られている。









 
図面
 
建築家
   

©Moreno Maggi

■マッシミリアーノ・フクサス略歴

1944年 イタリア、ローマ生まれ
1969年 ローマのラ・サピエンツァ大学建築学科卒業
1969-88年 アンナ・マリア・サッコーニと協働で事務所を開設。数々のプロジェクトを完成させ、
イタリアおよびフランスで知られるようなり、パリにもオフィスを開設
1989-93年 フランス・アカデミー会員
1999年 フランス建築グランプリ受賞
2000年 フランス文芸賞受賞
第7回ヴェニス・ビエンナーレ2000建築部門のディレクターを務める
2002年 アメリカ建築家協会名誉会員
2003年 ソフィア国際建築アカデミー名誉会員
2006年 RIBA名誉会員受賞
2007年 ヨーロッパ・ショッピング・センター賞受賞
2009年 ミラノ・トリエンナーレ金賞受賞
   

©Carlo Gavazzeni

■ドリアナ・フクサス略歴

ローマ生まれ

1979年 ローマのラ・サピエンツァ大学で近代・現代建築史学科を卒業。
さらに同大学建築学科へ進む。その後パリの建築専門学校(ESA)を卒業
1985年 マッシミリアーノ・フクサスと協働
1997年 フクサス・デザインを統括
2000年 第7回ヴェニス・ビエンナーレ2000建築部門のキュレーターを務める
2009年 ミラノ・トリエンナーレ金賞受賞


■代表作

主な作品に、スポーツ・コンプレックス+パーキング、グラフィッティ・ミュージアム、ミシェル・ド・モンテーニュ大学アート・ハウス、ウィーン・ツイン・タワーズ、ナルディーニ・リサーチ&マルチメディアセンター、ユーロパーク1、ユーロパーク2、ミラノ見本市会場、アルマーニ銀座、ストラスブール・ゼニス・コンサートホール、ペレス平和センター、アルマーニ4番街、ミッツァイル商業コンプレックス、サンジャコモ教区コンプレックスなど多数。

 

Materials : Courtesy of Massimiliano Fuksas Architetto