聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館(ドイツ, ケルン)
Design : Peter Zumthor
設計:ペーター・ズントー 遺跡空間を満たす繊細な光の帯 |
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ドイツのケルンといえば、天を突く「ケルン大聖堂」が有名だが、そこから比較的近い所に「聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館」が完成した。 1853年にキリスト教美術協会によって設立された「聖コロンバ教会」は、約2000年間のキリスト教美術品を収集してきた。協会は財政難になり、ケルン大司教区に組み込まれ、新しく建て替えることになった。そのコンペを制したのがスイス建築家のペーター・ズントーであった。 ズントーは既存の壁面や、聖コロンバ教会の廃墟の多角形プランを生かしてコンペに勝利した。1973年には、古い教会の下にローマ時代やゴシック時代や中世の遺構が発見され、それを保存・展示することになった。またゴッドフリート・ベーム設計の、“廃墟の聖母マリア”のための小さな「サクラメント・チャペル」(1957)をも組み込むことになった。 ズントーの「聖コロンバ」は、ちょうど交差点に面して立っている。グレーっぽい外壁は「サクラメント・チャペル」のコンクリート・ブロックに想を得て、デンマークに発注して2年がかりで製作したレンガだ。厚さ4㎝の薄いレンガが積層化されると、彼の代表作「テルメ・ヴァルス」(こちらは片麻岩)と同様、非常に緻密なテクスチュアとなる。 しかもここでズントーは、オープン・ブリックワークを採用。つまり薄いレンガで隙間をつくって積層化し、内部に光や空気を取り込む。この小さな隙間の密集した開口部は、特に1階の遺跡展示の空間では非常に効果的だ。ここではまずコンクリートをまとった鉄柱を注意深く遺跡の中に埋め込み、天井高12mの大きな空間をつくった。その柱の間を縫って、アフリカ産の赤いパダック・ウッドによる鑑賞者のための高架の通路が曲折している。この薄暗い空間に繊細な光の帯が流れ込む様子は特に美しい。 美術館は3階建てで、2階以上の床と、2重壁の部分に地熱を利用して水を通すパイプを埋め込んでいる。上階の展示室はRC打放しの壁とテラゾーの床で、彼の「ブレゲンツ美術館」に似たクールな雰囲気で、宗教的美術品がよく映える。 ズントーは開口部の数を抑えているが、所々に大きな開口部をつくっているので、都市に対するオリエンテーションがよく分かるし、ケルンの美しい町並みが手に取るよう見えるのは素晴らしい。 さて街角に立ってもう一度「聖コロンバ」を見ると、この建物は一向に新しく見えない。むしろ少し時を経た建物のように見える。それは彼が特注したグレーで淡黄色のレンガとその積み方にある。しかもこの素材は、ガラスや黒いスティール部分などともよく合うのだ。材料の扱いを熟知したズントーならではの傑作がまたひとつ増えた。 |
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