佳作
すまいのすきま すきまのふるまい   安田 大顕/東京大学大学院  太田 圭亮/東京大学大学院

住居の1階と2階を切り離してみる。
そうして出来た「すきま」は街並みにゆとりをもたせ、新たな自然環境や人々のつながりを作りだすきっかけとなるだろう。

風が通り抜け、光が差し込み、草花が育ち始める。さらに各層が左右前後にずれることで敷地の斜面と相俟って、とある家の1階と隣の家の2階が関係を持ち出す。その「すきま」の動線空間が街の路地となりあらたなコミュニティの創出をも予感される。
住居内に完結していた「居間」-「個室」を「母屋」-「離れ」に分けたその間にすきまを設ける事で、時間とともに住宅と地域がつながりあい、成熟した風景が浮かび上がってくる。
「すきま」でつながる5つの住居群
都市郊外では木造のマッスな住宅が立ち並び、無味乾燥な風景を作っている。
そんな木造住居を上下に分けることで、平凡な2階建て住居の風景から「立体積層した平屋」のような風景に変化する。のっぺりとした壁が連立する圧迫感のあった街並がリズムと陰影のある生き生きとした様相に生まれ変わる。
これまでの木造住宅の日常性は保ちつつも些細なゆとりをもたせることで住まい方も変化していく。1家族1住居「母屋」と「離れ」とに細分化することで、高齢化に伴う家族像の変化にも柔軟に対応できる。離れを他人に譲ったり、新たに離れを譲り受けたり。

時とともに住空間をカスタマイズすることで、「すきま」のあり方も多様化し、風景を作ることへの積極的に参加する契機となるのではないだろうか。