Marco Polo Tower (Hambourg, Germany)
マルコ・ポーロ・タワー(ドイツ、ハンブルク)
Design :Stephan Behnisch (Behnisch Architekten)
設計:シュテファン・ベーニッシュ(ベーニッシュ・アルキテクテン)
スカルプチュラル・アーバン・シルエット
1989年に創設されたベーニッシュ・アルキテクテンは、ドイツのシュトゥットゥガルト、ミュンヘン、およびアメリカのボストンに事務所をもち、シュテファン・ベーニッシュほか3名のパートナーによって運営されている。

2006年のコンペに勝った「マルコ・ポーロ・タワー」は、ドイツ・ハンブルクのハーフェン・シティおける最高の水景色を見晴らすエルベ川のウォーターフロントに立つ。すぐ横には、同じベーニッシュ・アルキテクテン設計の「ユニリバー本社」が、サステイナブル・デザインの装いで佇んでいる。

高さ55mの「マルコ・ポーロ・タワー」は、インナー・シティから延びてきたルートと、その先に延びる埠頭部分の結節点に立っている。埠頭にはクルーズ・シップ・ターミナルや水辺のプロムナードといった新しいアトラクションができて人気を集めている。

「タワー」の形態や配置はユニークで、ハンブルグにおけるエルベ川沿いのアーバン・シルエットに、非常に彫刻的な様相を見せている。17階建ての各階は、中心軸の周囲を数度ずつズレて回転しており、58戸のアパートメントは波止場や都心への素晴しい景色を満喫できる。

各住戸は60~340㎡ほどの広さがある。ペリメーター部分の広いテラスやバルコニーはリビング・エリアを外部へと拡大して外観上の柔和な輪郭ラインを構成し、「タワー」にユニークなイメージを与えている。

隣接するアパートメントを連結することで、内部スペースの拡大という高度なフレキシビリティも備えている。外観上の各フロアのバリエーションは、インテリアにも反映されており、非常に手の混んだプランをもっている。まず各階がどれひとつとして同じプランではない。また各住戸もすべてが異なるというバラエティの多さが自慢だ。

アパートメントは2DKからメゾネット的特徴をもった大きなペントハウスまで多種に渡っている。耐荷重構造エレメントや必要とされる固定的設備は、可能な限り切り詰められているため、住人は寝室、キッチン、浴室、リビングなどの位置を自由に決めるフレキシビリティをエンジョイすることができる。

アパートメントに入る否や、住人は遮るもののないオープン・プランのリビングルーム・ランドスケープを目にする。さらにその先にある大きなガラス・パネル越しに、ハンブルクのルーフスケープを楽しむことができる。

アパートメントはスケルトンで売りに出される。クライアントはインテリア・アーキテクトの助けを借りて、自分のテイストに合った自分なりの住戸をデザインすることができる。ベーニッシュ・アルキテクテンによって提案された住空間のコンセプトは、自然光の採光ととウォーターフロントのアーバン・ヴィスタだった。

「マルコ・ポーロ・タワー」はハイクラスの生活空間と、全体的なエコロジカル建築のコンセプトを合体させたものである。奥まったファサードは、オーバハングした上部のテラスによって太陽の直射光から保護されているため、追加のサンシェード等は必要ない。

熱交換器を用いた屋上のヴァキューム・コレクターは、熱をアパートメントのクーリング・システムに変える。イノヴェイティブな寝室の騒音遮断型エア・ルーバーは、外部からの騒音被害なしに自然換気を可能にしている。

 
図面
 
建築家
   


左端がベーニッシュ ©Mark Ostow

■シュテファン・ベーニッシュ略歴

1957年生まれ
1977-1979年 ルートヴィヒ・マクシミリアン大学で経済と哲学を学ぶ
1981年 アッカーマン&パートナー勤務
1984-1985年 米国ステファン・ウーリー&アッソシエイツのインターン
1987年 カールスルーエ大学建築学科卒業
1987-1989年 ベーニッシュ&パートナー(シュトゥットゥガルト)勤務
1989年 シュトゥットゥガルトにベーニッシュ・アルキテクテンを設立
1997年 ブルガリア国際建築賞銀賞
2004年 『アーキテクチュラル・レビュー』誌MIPIM未来プロジェクト賞
2005年 LEEDプラチナム賞、RIBA世界賞
2006年 『アーキテクチュラル・レコード』誌ビジネス・ウィーク賞
2010年 RIBA国際賞


■代表作

主な作品に、北ドイツ・ランデスバンク、世界LVA本社、セント・ベンノ体育館、オゼアネウム、テレンス・ドネリー・センター、ゲンジム・センター、スマート・ハウス・オルデンブルク、知的財産機関、ワケニンゲン森林&自然研究所、モンテソリ・スクール・スポーツホール増築、バード・アイリング市庁舎、コルバームーア市庁舎、図書館&教育センター、コルバームーア集合住宅、子供デイケア・センター、ユニリバー本社、マルコ・ポーロ・タワーなど多数。

 

Photos and materials: Courtesy of the Architect